みなさん、こんにちは。海と日本プロジェクト in ふくしまレポーターの松井武郎です。
今年の6月に、「海無し市」の福島市からいわき市へと移住してきました。いわきのこと、海のことをほとんど知らない私がまず手をつけたのが、いわきの海を知ること。新しくできたサイクリングロード「七浜海道」の周辺をドライブしたり歩いたりして見た風景や学んだことをレポートしています。いわき市の中之作港から始まった連載は6回目。前回は七浜海道の南端・勿来の関公園に到達しました。今回からはスタート地点の中之作から久之浜の方へ向かっていきたいと思います。今回は豊間海岸をご紹介します。
豊間海岸を訪れて最も印象的だったのは、海沿いを走る豊間四倉線からの眺望の素晴らしさです。近くには、いわき市のシンボルである塩屋崎灯台があり、晴れた日には青い空・海と真っ白な灯台とのコントラストが絵になります。私が訪れたのは夕方だったのですが、昼間のさわやかな印象を受ける景色とは違い、霧がかっった幻想的な景色を楽しむことができました。
素晴らしい眺望が楽しめる豊間海岸沿いの道路はサイクリングに最適です。七浜海道の中でも、最も海の景色を楽しめるスポットではないでしょうか。ゆっくりと海の匂いや潮風を感じるのも良し、タイムトライアルに挑むのも良し。様々な楽しみ方ができます。
豊間四倉線からの眺望の素晴らしさは素晴らしさは、道路が防波堤の上にあるためなのですが、この防波堤によりかつての街の風景は大きく変わってしまっているという難しさがあります。はしかしこの豊間海岸周辺は、いわき市の中でも津波の被害が最も大きかった地域で、震災の前後で街の景色は大きく変わってしまったといいます。
現在住宅地は高台に移転し、防波堤・防災緑地により、街の方から海は見えません。しかし以前は街のどこからでも海を眺めることができたようです。昔から慣れ親しんできた海の景色が失われ、住民の方には大きな戸惑いがあったのではないかと思います。地域に古くから残る風景や伝統を生かしつつ、防災に配慮したまちづくりを行えればそれが一番良いとは感じつつ、それを実際に実現することは非常に困難な道のりであり、住民の方々に計り知れない葛藤があったであろうことは、ヨソモノの私でも想像に難くありません。
これから生まれて来る防波堤建設後の景色しか知らない子どもたちは、現在の防波堤の上からの眺望は楽しめても、以前このあたりがどのような風景でどのように生活が営まれていたのか思い描くことは難しいのではないでしょうか。後世に対する記憶の継承の難しさというのは、豊間だけでなく、津波で大きな被害を受けた地域では同様の問題が起きているようです。
現在豊間防災緑地があるところには、震災前豊間中学校の校舎があったそうです。豊間の隣の薄磯防災緑地には、取り壊されてしまった旧豊間中学校校舎の思い出として、旧学校敷地内にあったハマナスや石碑が設置されているそうです。現在の風景から震災以前の街の風景や営みを思い描くのが難しいからこそ、こうした後世に伝えていくきっかけになるようなものが重要なのではないかと感じました。
海プロ in ふくしま レポーター:松井武郎
イベント名 | 七浜海道散歩⑥ 豊間海岸 |