みなさんこんにちは!
海と日本プロジェクト inふくしまレポーターの前野です。
私が住んでいるいわき市の中之作では、軒先にガラスの浮き玉を飾っている民家がちらほらみられます。今の姿から、なんとなくインテリアを想像してしまいますが、実はこのガラス玉、昭和20年ごろまでは漁に使う「漁具」として使われていたんです! みなさん、知っていましたか?
現在はプラスチック製のものに代替されてしまい、ガラス玉は漁具として使われておりません。今や港町の風景を象徴するガラス玉ですが、当時使っていた余りや流れ着いたものを民家に飾るようになったところから、現在の用途になったのではないかと考えられます。ガラス玉をつくる職人はいなくなってしまいましたが、ガラス玉に網をくくりつける「網掛け」の技術を継承している方がいると聞きつけ、取材にいってきました!
向かったのは、中之作の隣・折戸地区にある坂本つり具店。この店のオーナー・坂本政男さんは「網掛け」を伝承する匠の一人です。折戸出身の坂本さんは、東日本大震災をきっかけに自分のやりたかったことをやろうと、釣り好きが高じてつり具店をオープン。しばらくして漁師としても活動しはじめ、その流れで網掛けも教わるようになったといいます。
坂本さん「ガラス玉同士がぶつかって割れないようにするために、漁に出ない間、漁師たちは網掛けをひたすらやっていたんだ。ガラスは、自分たちが飲んでいたビール瓶を溶かしてつくったともいわれているね。」
ガラス玉が使われ始めたのは明治時代からで、その前に使われていたのはなんと桐でできた「浮き」だそう。坂本さんが趣味で収集してきた漁具コレクションの中から、桐の浮きも実際にみせていただきながら、ガラス玉にまつわるさまざまなエピソードを伺いました。
坂本さんは、いわき市の公民館で行われている市民講座や江名地区まちづくり協議会のイベントで、網掛け講座の講師を務めているといいます。講師は坂本さんを含めて3人。それぞれ編み方に特徴があるため、同じ網掛けといっても同じものはできないんだとか。
せっかくだから網掛けを体験してみようと、後日、中之作に住む20代の若者向けに、坂本さんによる網掛け講座を開催していただきました。初めての方だと、1個編むのに2時間ほどかかりますが、坂本さんはこれを30分ほどで編み上げてしまうといいます。
集まったメンバーは、コツを教わりながら黙々と編み続けてきました。網が途中で切れても大丈夫なように、網目は一つずつ独立しているそうです。自分で編むことで、よりいっそう漁師の知恵や工夫がつまった技術を体験できると感じました。
福島県には、港町の文化を伝える「資料館」はまだありません。江名・中之作では、漁具をはじめ、地域の歴史を残していこうと、有志のみなさんで、漁具の整理・保存活動を行なっています。網掛けのような体験を通じて、匠の技や地域の文化に目を向けるきっかけを増やすことが大切だと思いました。
海と日本プロジェクトinふくしまレポーター:前野
イベント名 | ガラスの浮き玉の網掛け |
参加人数 | 5人 |
日程 | 2023年6月19日(月) |
場所 | 清航館 |