レポート
2023.06.28

若者たちと、ふくしまの海を考える

 

みなさんこんにちは。海と日本プロジェクト in ふくしま、専任事務局員の小松です。

いきなりですが、今年の春から、いわき市にあります福島工業高等専門学校で非常勤講師として働くことになりまして、化学・バイオ工学科の5年生に対して、ふくしまの海や水産業についてレクチャーを行なっています。若者たちとの時間がとても充実しており、今回少しその話をご紹介したいと思います。

私たちが今、取り組んでいるのが、福島県、特に私が住んでいるいわき市の水産業について学ぶことです。震災から12年が経過していますが、漁業・水産業の復興はまだ道半ば。原発に溜まり続けている「処理水」の海洋放出など、新たな課題も生まれており、ぜひこの水産業の復興をみんなで考えたいと思い、思い切って水産業に振り切った授業を展開しています。

授業は毎週火曜日で、午前中の2コマを使わせてもらっています。序盤戦は、いわき市水産課が出している水産業に関するデータを読み解き、いわき市の漁港や魚市場などの現状・課題などを整理し、中盤戦では、写真にもあるように、いわき市でさまざまな活動を展開する実践者をゲストに迎え、どのような思いで活動しているのか、どのようにアイデアを出しているのかなどをお話ししてもらいました。

授業の終盤は、それぞれの生徒に「水産業の課題解決を図るプラン」を考えてもらう予定です。自分ごととして水産業のことを考えてもらうには、情報を知り、学ぶだけでなく、自分が「企画主」になって、課題解決型のプラン・プロジェクトを自ら企画することが近道。学生たちからどのようなプランが出てくるか、楽しみです。

 

多彩なゲストから、水産業の課題解決のヒントを探る

  1. グラフィックデザイナーの髙木市之助さんからは、デザインについて学びました
  2. ゲストハウスを営む北林由布子さんからは、地域の面白がりかたを学びました
  3. イラストレーターの小堀麻沙子さんからは、活動への思いを伺いました

 

今回、私の授業を受けている学生たちは、水産業の専門ではもちろんありませんが、大事なことは、自分の関心や課題、「高専生である」という立場、当事者性をうまく活用しながらプロジェクトを考えることです。

困った人たち、課題を背負った人たちを助ける、というアプローチでは、どうしてもよそごと、他人事になってしまう。そうではなく、「自分ごと」として捉え、自分たちで動くということを知ってほしいと思い、日々の授業を組み立てています。

私も、かつては「自分が気になって調べたいと思ったから」という理由で、福島第一原発沖で海洋調査を行うラボに参加していましたし、コロナ前まで、町内の鮮魚店で魚と酒を楽しむイベントなどを企画していました。どちらも自分たちの疑問や思いから出発しています。

どうあるべきか、ではなく、どうありたいか。何がしたいか。そういう欲求からスタートすることの重要性も含めてレクチャーしており、特に、ゲストを招いた3回シリーズの授業では、実践者から貴重な言葉をたくさん聞かせてもらいました。

3人いずれも「自分ごと」からさまざまなプロジェクトを立ち上げている当事者です。地域の中で動く、地域の中で才能を発揮する、そういうイメージを膨らませることができたのではないかと思います。

福島の水産業・漁業が復興の途上にあるということは、まだまだ福島の海が本来のポテンシャルを発揮できていないということでもあります。まだまだ時間はかかるでしょう。でもだからこそ、こうして世代を超え、次の時代を担う人たちと共に考える。そういう機会が必要だなと思います。

私の担当は「前期」なので、8月には授業は終了しますが、この「海プロ」で培った経験がとても役に立っていると感じます。今回の授業を経た高専生たちがいずれ社会に出たときに、「ああ、あんなことを授業で学んだっけ」なんて思い出してくれたらうれしいですね。

 

(専任事務局員・小松)

 

イベント詳細

イベント名福島高専での水産授業
参加人数30名
場所福島工業高等専門学校
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