みなさんこんにちは、海と日本プロジェクト in ふくしま事務局レポーターの森亮太です。
美しい海を未来に残すためには、海洋汚染のことをちゃんと知って、私たち一人ひとりに何ができるかを考え、そして行動していく必要があります。そのためにまず必要なのが、海のごみを知ること。ということで、今回から「海ごみ」に関する記事を10回にわたって連載していきます。初回は、海ごみの中でももっとも深刻な状態になっている「プラスチックごみ」について紹介していきます。
海ごみレポート 第1回
海洋プラスチックごみ、その厳しい汚染の現実
私たちもよく使うマクドナルドやスターバックスコーヒーなど世界的外食チェーンに、プラスチック製ストローの使用禁止の動きが広がっています。なぜかといえば、それらのプラスチックが海洋汚染の最大の原因となっているからです。プラスチックによる海洋汚染のニュースを、テレビやニュースサイトなどで見たことがあるという人は多いはずです。地球温暖化と同じように、今、この「海洋ごみ」が地球環境の大きなリスクになっているのです。
ちなみに、「海洋ごみ」といっても様々なものがあります。私たちがイメージしやすいのは海岸などに流れ着いた「漂着ごみ」かもしれません。しかし海洋ごみは、漂流しているごみや海底に沈んでいるごみもあります。実は、私たちがイメージしやすい「漂着ごみ」は、海ごみ全体の5%にすぎません。残りの95%は、私たちの目に触れにくい海の上や、海の底にあるのです。
このように、タダでさえ把握しにくい海洋ごみ。ごみの種類はどうなっているのかというと、例えば環境省が「漂流ごみ」を調べたデータによれば、ごみ全体のうち、プラスチックごみの占める割合が半分近くになっています。これは「漂流ごみ」のデータですが、海洋ごみのなかで、いかにこの「プラスチックごみ」の量が多いかがわかります。
すでに世界中の海に存在していると言われるプラスチックごみの量は、なんと1億5000万トン。そこに毎年年間800万トンものプラスチックごみが新たに増えていると推定されています。年間800万トンというと、1分間に1度、15トントラックに満載されたプラスチックごみが海に放出されている計算になります。この記事をご覧になっている間にもどんどん増えています。
そしてこの海洋プラスチックごみは、このままのペースで生産量が増え続けた場合、2050年には現在の4倍となり、「海洋プラスチックごみの量が海にいる魚を上回る」というショッキングな予測が出ていることが、ダボス会議で知られる「世界経済フォーラム」でも報告されています。
何百年と残るプラスチックごみ
プラスチックは非常に安定性が高く、自然分解されるのに時間がかかります(だからこそ、世界中で使われているわけですが)。
WWFジャパンのグラフによると、一番分解されやすい「吸い殻」で1.5年〜10年、身近なペットボトルでは400年、釣り糸に至っては自然分解されるのに600年もの時間がかかります。ということは、一度海洋に放出されてしまうと、多くのプラスチックごみは数百年以上もの間、海洋中に残り続けるということです。
残り続けるプラスチックを主にする海洋ごみは、生態系にも大きな影響を与えています。魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が、海洋ごみによって傷つけられたり死んだりしており、このうち92%がプラスチックの影響によるものだというデータもあります。プラスチックごみの摂取率はウミガメで52%、海鳥で90%と推定されているそうですが、非常に高いですね。動物たちにとって、プラスチックなどの海洋ごみは、自分の命を左右する「凶器」と言っても過言ではありません。
また、マイクロプラスチックと呼ばれる、5mm以下となったプラスチック片の問題も深刻です。プラスチック片そのものに化学物質が添加されていたり、漂流中に化学物質を吸着してしまうこともあるため、マイクロプラスチックには有害物質が含まれていることが少なくないのです。そして、そのマイクロプラスチックが海洋生態系に取り込まれ、私たち人間の体にも取り込まれていく…。マイクロプラスチックが人を含む生物へどのような影響をもたらすかはまだ明らかになっていませんが、良い影響があるようには思えませんよね。
海洋ごみと聞くと、自分たちの生活からは遠いもののように思えますが、ペットボトルが分解されるのに400年かかると知っていれば、陸だろうと海だろうと、ごみのポイ捨てなど気軽にできるものではないはず。大手企業がストローをプラスチックにしていることは歓迎すべきことですが、もっと大事なのは、私たちがごみに対する意識を変えることではないでしょうか。
もうすでに1億5000万トンもの海洋ごみが、私たちの海に存在しています。これ以上増やすことのないよう、ポイ捨てしない。見つけたら拾う。当たり前に分別して捨てる。そしてプラスチックごみになりそうなものは選ばない。私たちの日々の暮らしや選択が、今、大きく問われているのではないでしょうか。
今回は海洋ごみ、その中のプラスチックごみにまつわるお話をしていきました。次回からひとつひとつのトピックを掘り下げてお話ししていこうと思います。まずは知ることから。ぜひご覧ください。
参考資料
WWFジャパン 海洋プラスチック問題について
環境省 海洋ごみをめぐる最近の動向より
イベント名 | 海洋プラスチックごみ、その厳しい汚染の現実 |