レポート
2019.07.22

【海ごみレポート4】海洋プラスチックの成れの果て、マイクロプラスチック

 

みなさんこんにちは、海と日本プロジェクト in ふくしま事務局レポーターの森亮太です。

美しい海を未来に残すためには、海洋汚染のことをちゃんと知って、私たち一人ひとりに何ができるかを考え、行動していく必要があります。そのためにまず必要なのが海のごみを知ること。ということでスタートした海ごみレポートは今回が第4回。漂流ゴミ、その中でも特に大部分を占めているプラスチックごみ。その先には何が待っているのでしょうか。

 

海ごみレポート 第4回
海洋プラスチックごみの成れの果て、マイクロプラスチック

これまで海ごみの中でも漂着ごみ、漂流ごみについてお話ししてきました。その中でも大部分を占めるのがプラスチックごみ。海洋に流れ出たプラスチックは、波の力や紫外線の影響でどんどん細かくなっていきます。プラスチック片が5mm以下になったものが、マイクロプラスチックと呼ばれています。このマイクロプラスチックが、海洋プラスチックの中でも特に問題視されています。

 

マイクロプラスチックの海洋分布

 

このモデルによる予測を見てわかる通り、特に日本近海を含めたアジアの沿岸部は世界の中でもマイクロプラスチックの濃度が特に高いホットポイントでもあります。マイクロプラスチックの一体何が問題なのでしょうか。

 

1つ目に、人間も含む生物への影響があります。

近年、海鳥や魚介類の体内からマイクロプラスチックが大量に見つかっています。多くの海の生物が、マイクロプラスチックを餌と区別できずに捕食・誤飲しています。海鳥がプラスチックゴミを摂食することはその代表的な例で、外洋に棲息する渡り鳥の一種ハシボソミズナギドリは古くからプラスチック摂食の報告のある海鳥です。

 

海鳥から見つかるマイクロプラスチック

 

体内の消化器官の中にあるマイクロプラスチック。当然影響があると考えられます。中で詰まる、消化器官を傷つける、栄養失調などの物理的な影響が考えられます。海の小さな生物がマイクロプラスチックを取り込み、食物連鎖で海鳥や魚に取り込まれて検出されているということですね。

これは私たち人間に全く関係のない話ではありません。この食物連鎖の流れの中で、知らず知らずのうちにプラスチックを摂取しているのです。昨年2018年、オーストラリアの研究グループの調査によると、日本人を含む世界8か国の全員の便からプラスチックが検出されたという研究も出ています。つい最近では、WWF(世界自然保護基金)が、「1週間に1人平均5gのプラスチックを体にとり入れていると見られる」という報告を出しました。健康にどのような影響があるかは研究が進められている段階でまだわかってはいませんが、いい影響があるとはとても考えられませんね。

 

2つ目に、化学汚染物質を世界各地に運ぶこと。

そもそもプラスチック自体に様々な添加剤が含まれていて、それらの添加剤には環境ホルモンなどの有害化学物質も含まれています。さらにプラスチックは、周りの海水中から有害化学物質を引きつけてきてしまう特性も挙げられます。

海水中には非常に低濃度ですが、分解されにくく有害な化学物質が溶けています。それらの化学物質は残留性有機汚染物質(POPs)と呼ばれており、ストックホルム条約という国際条約で規制されています。海水中で低濃度なのに何故問題なのかというと、それらの物質がプラスチックに吸着し、濃縮されていってしまうためなのです。プラスチックは周りの海水に比べて100万倍程度に汚染物質を濃縮しており、1gのプラスチックがあれば、海水1トン分の汚染物質を濃縮していると言われています。

 

プラスチックが運ぶ化学汚染物質

 

世界各地の海岸から海岸に落ちているプラスチックを送ってもらいその中の汚染物質を分析するというプロジェクトでは、世界50カ国、200地点以上の分析を行い、全ての試料から化学汚染物質(PCBs)が検出されました。また人間の社会活動が行われていない島にも汚染物質が運ばれていることが明らかになりました。プラスチックごみはただの海ごみではなく、汚染物質の運び屋でもあるのです。

ここまでマイクロプラスチックの問題点を話してきましたが、身近な日常生活の中にもマイクロプラスチックが存在しています。例えば、パーソナルケア商品(歯磨き粉、洗顔料、ボディソープ、化粧品など)にスクラブ材やとろみを出すためなどの目的で含まれているマイクロビーズです。

マイクロビーズとは1mm以下の超微細プラスチックで、肉眼では見えない程小さいものもあります。これが厄介なのは、下水処理施設のフィルターをくぐり抜けてしまい、海への流出を防ぐのが困難なこと。最近問題視され世界各国で規制も始まっており、例えば花王では2016年までに代替商品に切り替えるなど、企業での対応も進んでいます。

ケア製品を買う時に、製品表示を見てマイクロビーズを含む商品は買わないなど、一人ひとりの意識で変えられる部分もあります。目の前の商品を買うときにふと、海のことまで考えてみる。それだけでも行動は変わってくるのではないでしょうか。マイクロプラスチックの問題は、実に私たち人間の生活に密着した問題なのです。

 

参考資料・画像出典
環境省 海洋ごみをめぐる最近の動向
NHK・大学生とつくる就活応援ニュースゼミ 1からわかる!プラスチックごみ問題(1)
International Pellet Watch Japan 「プラスチックの時代からの脱却を」
kao 花王株式会社 マイクロプラスチックビーズへの対応

 

イベント詳細

イベント名海洋プラスチックの成れの果て、マイクロプラスチック
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