【海ごみレポート5】プラスチックごみの不都合な真実

2019-9-26
海と日本PROJECT in ふくしま

 

みなさんこんにちは、海と日本プロジェクト in ふくしま事務局レポーターの森亮太です。

美しい海を未来に残すためには、海洋汚染のことをちゃんと知って、私たち一人ひとりに何ができるかを考え、行動していく必要があります。そのためにまず必要なのが海のごみを知ること。ということでスタートした海ごみレポートは今回が第5回。海ごみの中でも特に問題となっているプラスチックごみはどこから出たものなのか、紐解いていきます。

 

海ごみレポート 第5回
プラスチックごみの不都合な真実

これまで、海ごみの中でも漂着したごみ、漂流ごみ、海の中に無数に存在するマイクロプラスチックについて取り上げてきました。海ごみの中でも特に多く問題となっているのは、プラスチックごみ。プラスチックごみは一度海洋に放出されると回収が困難であるばかりか、100年単位で分解されず残り続けます。このままのペースでプラスチックごみが海洋放出され続けると、2050年には魚の量を上回ってしまうというショッキングな報告もされています。

これ以上海洋放出されるプラスチックごみを減らすにはどうすれば良いか。それを考えるために、まずはどこからプラスチックごみが海洋に流れ出ているかをお話ししていきたいと思います。プラスチック自体は世界中で使われていますが、特に海洋放出が激しいのは私たちが住むアジア圏なのです。次の表をご覧ください。

 

マイクロプラスチックの海洋分布

 

この表を見ると、上位5カ国は全てアジアの国が占めています。2010年と少し古いデータですが、中国が353万トン/年と突出してプラスチックごみを海洋に流出させていることがわかります。一方日本はというと、30位で6万トン/年と推計されています。続いて、プラスチックごみの国別の管理状況をご覧ください。

 

マイクロプラスチックの海洋分布

表の円グラフの赤い部分が、管理できていないプラスチックごみ

 

この表を見ると、中国、インド、東南アジアではプラスチックごみの管理がほとんどできていないことがわかります。リサイクルシステムが確立されていないとも言えるでしょう。これまでの表と図からは、私たち日本はリサイクルシステムができており、プラスチックごみはしっかり管理できていて、海洋放出は少ないと理解できます。間違ってはいないのですが、話はそう単純ではありません。続いて、こちらのグラフをご覧ください。

 

マイクロプラスチックの海洋分布

 

こちらのグラフは、日本のプラスチックごみの使用後の状況を表したものです。2017年に日本で生まれたプラスチックごみは903万トン。政府に言わせれば、14%の単純焼却や埋め立てを除くと、86%はリサイクルなど有効に利用されているとされています。しかしながら、全体の15%、135万トンものプラスチックごみが「資源」として輸出されています。

ごみが資源? と言われるかもしれませんが、プラスチックの原料は石油。燃やせば燃料にもなります。資源として再利用すれば再びプラスチックとしても利用できる。石油よりかは安価に購入できるプラスチックごみは、資源とも言えるのです。プラスチックごみを処分したい日本と、安価で購入したい他国の利害が一致しているのです。

ここまで来ると、話が見通せた方もいるかもしれません。日本のプラスチックごみの輸出先の大半は中国だったのです。(※2017年11月からは中国が輸入禁止措置を掛けたため、現在は他の国に輸出先が移っています)

 

マイクロプラスチックの海洋分布

赤い線が中国向けの輸出量。2017年11月中国の輸入禁止措置からほぼ0となった。

 

このグラフを見ると、実に分かりやすいですね。プラスチックごみの輸出先の大半は中国でした。自国で処理しきれないから、輸出する。リサイクルシステムが整備されておらず、海洋放出の可能性がある国に、です。これでは、日本もプラスチックごみの海洋放出の一端を担っていると言っても過言ではないでしょう。

これは、日本にとって不都合な真実かもしれません。しかし、日本だけではなく世界的にも問題となっており、2019年5月に開かれた「バーゼル条約(有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約)」の第14回締約国会議(COP14)では、汚れたプラスチックの輸出入を制限するということも決まっています。輸出云々は、私たち一般消費者にとって関与できる問題ではないのも事実ですが、そんな現実を知った上で、私たちは何ができるのでしょうか。最後にこのグラフをご覧ください。

 

マイクロプラスチックの海洋分布

プラスチックごみの排出量(茶軸)と一人当たり排出量(赤軸)

 

最後のグラフは、国別のプラスチックごみの排出量です。人口が多い中国は排出量が頭一つ抜き出ています。しかしながら、一人当たりの排出量(赤棒)で見ると、日本はアメリカに続いて世界2位となっています。アメリカ、日本をはじめとする先進国はプラスチックごみの排出大国なのです。そして、そのプラスチックごみは海洋放出に確実につながっているのです。

例えばあなたがきちんとペットボトルのゴミ箱に入れたとしても、もしかしたらそのごみは海外に渡り、行方が分からなくなり海ごみになっているかもしれない。大変恐ろしいことですが、そんな可能性だってあるのです。まずはプラスチックのごみを減らすことを考えるのが、海ごみを考える第一歩となります。

 

参考資料・画像出典
環境省 プラスチックを取り巻く国内外の状況
NHK・大学生とつくる就活応援ニュースゼミ 1からわかる!プラスチックごみ問題(1)
UNEP report-on-single-use-plastic
GRID Arendal  Plastic waste produced and mismanaged 
WWF G20大阪サミット前に海洋プラスチック汚染問題解決への政策提言を実施
トップ画像 Overfilled trash can, getty image

イベント名プラスチックごみの不都合な真実
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