【海ごみレポート8】プラスチックを減らす意識ー国内での取り組み

2019-9-30
海と日本PROJECT in ふくしま

 

みなさんこんにちは、海と日本プロジェクト in ふくしま事務局レポーターの森亮太です。

美しい海を未来に残すためには、海洋汚染のことをちゃんと知って、私たち一人ひとりに何ができるかを考え、行動していく必要があります。海ごみレポートは今回が第8回。海ごみの中でも特に問題なのは、一度海洋に放出されると半永久的に残り続けるプラスチックごみです。2050年には、魚の量と同じくらいのプラスチックごみが海に漂うというショッキングな予測もされています。世界中でプラスチック削減の動きが進む中、日本国内ではどのような取り組みが進められているのでしょうか。

 

海ごみレポート 第8回
プラスチックを減らす意識ー国内での取り組み

これまでのレポートで、海洋に放出されるプラスチックごみの大半が中国や東南アジアなど、リサイクルシステムやごみ管理が不十分なアジア圏から流出していることをお伝えしてきました。しかしその背景には大量のプラスチックを生産・消費している先進諸国があり、資源という位置付けで中国や東南アジアに輸出している現実がありました。日本もその先進諸国の一つ。一人当たりのプラスチックごみの量ではアメリカにつぐ世界第2位で、世界のプラスチック問題の中でも中心の存在です。

 

マイクロプラスチックの海洋分布

世界各国のプラスチック包装ごみの排出量のグラフ。一人当たりでは日本は世界2位

 

一方で、日本の取り組みは、欧州連合(EU)などに比べて遅れているとも言われています。昨年の先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、プラごみ削減に向けて数値目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」への署名をアメリカとともに拒否し、批判を浴びたことがあります。国内外からの批判、プラスチックごみ受入大国だった中国の輸入禁止措置を受けて、重い腰をあげた政府は2019年5月に「プラスチック資源循環戦略」を打ち立てました。

「プラスチック資源循環戦略」の中では、リデュース・リユース・リサイクル・再生利用と各方面での目標が打ち立てられました。特に注目すべきところは、リデュースの目標「2030年までに使い捨てプラスチック25%削減」でしょう。この目標は、署名をしなかった「海洋プラスチック憲章」を上回る目標であり、政府としての意気込みが感じられます。

 

 

レジ袋の削減から意識を変えていく

つい最近、使い捨てプラスチック削減に関して新しい動きがありました。2019年9月26日に、環境省と経済産業省の両省でプラスチック製レジ袋の有料義務化に関する審議会初会合が行われたのです。これは、来年2020年4月から商品を持ち帰るレジ袋の原則有料化を目指すというもの。レジ袋は、世界では45カ国以上の国が禁止化・有料化を進めており、日本もようやく追随することとなります。

 

マイクロプラスチックの海洋分布

9月26日に行われたレジ袋の有料義務化に関する審議会の様子

 

スーパーマーケット協会、チェーンストア協会やフランチャイズチェーン協会など、日本の小売業界が集まった会合。その資料を見ると、世界的な使い捨てプラスチック削減の潮流もあり、どの業界も概ね賛成の意向を示していました。資料の中でも興味深い一文を一つ紹介します。

「国内のレジ袋は廃プラスチックの約2%に過ぎず、有料化することで削減できても廃プラスチックの実質的な削減には至らない。(中略)しかし、レジ袋の削減は内容がわかり易く、無駄なプラスチックを使用しないという消費者への意識改革へつながっていくと期待したい。」

リサイクルへの高い意識に比べ、そもそもの使う量を減らす「リデュース」の考え方がまだまだ浸透していない日本国内。プラスチックごみを減らすのに一番優先すべきはリデュースであると以前のレポートでもお伝えしました。一番身近な使い捨てプラスチックでもあるレジ袋の原則有料化によって、プラスチックを「使わない」という意識が少しづつ広まっていくのではないでしょうか。

 

 

クジラからのメッセージ

一方で、プラスチックごみを削減していこうと積極的に取り組む地域もあります。湘南など、国内でも有数なサーフスポットをもつ神奈川県です。神奈川県では、2019年8月「かながわプラごみゼロ宣言」を発表しました。きっかけは1年前の2018年夏。鎌倉市由比ガ浜でシロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられ、胃の中からプラスチックごみが発見されたのです。これを「クジラからのメッセージ」として受け止め、プラスチック製ストローやレジ袋の利用廃止・回収などの取組を、市町村や企業、県民とともに広げていく、というものです。

 

マイクロプラスチックの海洋分布

鎌倉・由比ヶ浜にシロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられた

 

鎌倉市役所では、自販機からペットボトルを無くしたり、マイカップ対応の自販機に切り替える、会議などでのペットボトル使用制限など率先してプラスチックの使用量削減を進めています。また、オリンピックの競技会場となる湘南港に海洋プラごみ回収装置(シービン)の導入を決定。海面に浮かぶごみを装置内のネットに回収する仕組みで、日本国内では初ですが、現在ヨーロッパを中心に約700台導入されています。

 

マイクロプラスチックの海洋分布

シービンは海面を漂うごみを吸い込んで回収する

 

「かながわプラごみゼロ宣言」で目指すのは、2030年までにリサイクルされない、廃棄されるプラごみをゼロにすること。そのための取り組みが重ねられています。このように、日本国内でも少しずつプラスチックごみを減らす取り組みが始まっています。

一番大切なのは、プラスチックの使用を減らしていかなければいけない、という意識です。レジ袋程度では、海ごみの問題を解決することはできません。しかし、プラスチックを減らすという意識を全体で持つことから、一つひとつの行動であったり、一人ひとりの生活習慣が変わっていきます。そして、それは確実に海ごみ、特に厄介なプラスチックごみを減らすことに繋がっていくでしょう。

 

参考資料・画像出典
環境省 プラスチックを取り巻く国内外の状況プラスチック資源循環戦略(概要版)
UNEP report-on-single-use-plastic
神奈川県 「かながわプラごみゼロ宣言」―クジラからのメッセージ―
経済産業省 第1回 産業構造審議会 産業技術環境分科会 廃棄物・リサイクル小委員会 レジ袋有料化検討ワーキンググループ
タウンニュース藤沢版 海洋プラごみ削減をー県が湘南港に回収装置
タウンニュース政治の村 マイクロプラスチック対策として、海洋プラごみ回収装置(Seabin シービン)を導入します
ヤフーニュース 「プラスチック資源循環戦略」のポイントと留意点
朝日新聞 鎌倉の漂着はシロナガスクジラの赤ちゃん 国内では異例

 

イベント名プラスチックを減らす意識ー国内での取り組み
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