東日本大震災で巨大津波の被害を受けた福島県浜通り。地域の復興の「今」を見つめ、今一度、海に根付いた地域の文化や、その町に生きて来た人たちに思い馳せたい。海と日本 PROJECT in ふくしまでは、そんな思いから、被災地の今を紹介するシリーズ「海と復興」をお届けしています。
20回目となる今回は、いわき市南部の要衝、「勿来漁港」を紹介します。
勿来漁港は、天然の入江を利用した自然港として昔から利用されてきました。戦後、急速に整備がなされ、定置網、底曳網漁業の基地として発展。茨城県との境にあることから「アンコウ」の名所として知られていました。震災前は、60隻近くの漁船が所属し、港は日々の水揚げで賑わいを見せていました。
震災と原発事故後は、目と鼻の先、茨城県の平潟漁港では盛んに漁が行われているのに、勿来は福島県のため漁が自粛されるという状況が続いてきました。県境を挟んで、状況がまったく異なってしまったのです。現在は、試験操業という形ですが、かつての賑わいを少しでも取り戻すべく、漁業は続けられています。
昨年より連載してきた、シリーズ「海と復興」。この勿来漁港で20回目。いわき市を中心に、北部の相双地区を含め復興の現状をレポートしてきましたが、この勿来漁港のレポートで福島県の南端に来たことになります。
福島県の海を語る時、やはり「震災」と「原発事故」を避けることはできません。放射能の影響を受けた場所のなかには、未だに立ち入りできない場所もあります。北部の相双地区の漁港や観光地は、復旧作業の途中で取材することができない場所も少なくありませんでした。しかし、すべてに共通するのは、災害があっても、海と暮らそうという地元の人たちの心でした。
失ってみたからこそ、気づけるもの。福島には、それがあると思います。だからこそ、当たり前のものだと考えずに、海との関わりを掘り下げていくこと。そしてそれを伝えることを、続けていきたいと思います。
(専任事務局員・小松)
イベント名 | 勿来漁港 |
場所 | 福島県いわき市勿来町九面地内 |