みなさんこんにちは! 海と日本プロジェクトinふくしまレポーターの前野です! 先日、7月12日に南相馬市小高区にオープンした「おれたちの伝承館」に行ってきました。おれたちの伝承館は、原発事故の教訓を伝承することを目的に建てられた手作りの美術館で、写真家や現代美術家らが空き倉庫を改修して美術館に仕立てました。
美術館を主宰するのは、「もやい展」のみなさんです。原発事故の災禍を後世に伝えたいと考えるアーティストが集い、2017年より全国各地でグループ展「もやい展」を開催してきました。グループの名称になっている「もやい」は、船と船とをつなぎあわせる縄の結び方の名称を指します。もやいには、共同で何かを行うという意味もあり、漁師町・水俣で起こった水俣病でも、人々の絆をつなぎ直すべくはじまった運動が「もやい直し」と名付けられています。
これまで全国各地でグループ展を行ってきた「もやい展」のみなさんが、なぜ今回小高区に常設展示の拠点を構えることになったのか。美術館に展示されている「海」の作品とあわせてレポートします!
「おれたちの伝承館」は、JR小高駅から徒歩5分ほどの場所にあります。空き家になっていた建物は、もともと「浅野設備」という建設会社の作業場として使われていました。工具好きの社長が集めたたくさんの工具が同じ敷地内の倉庫に眠っており、今なお当時のままの状態で現存しております。
もやい展のみなさんは、南相馬市小高区にある「双葉屋旅館」での滞在中に、浅野設備が空き倉庫になっているという情報を知ったといいます。そこで、ここを拠点に原発事故を伝える伝承施設を作れないかという構想が立ち上がり、地元のボランティアのみなさんと一緒に「おれたちの伝承館」を建設を進めてきたそうです。地元住民と一緒に回収してつくられた場所であるという点において、浅野設備の元社長の「自らの手でつくる」というあり方が継承されていると感じました。
伝承館の中には、写真や流木を使った展示などさまざまな作品が展示されていました。中でも、福島県須賀川市出身のアーティスト・ノグチクミコさんの「貝のつぶやき」という作品が印象的でした。この作品は、ノグチさんが実際に小高区の村上海岸で拾ってきた貝が、原発事故に対する思いを訴えているというものです。見落としてしまいがちな貝にも、命や思いが宿っているというメッセージとも捉えられ、海に関わるものの捉え方や今後の伝承のあり方を問い直す作品なのではないかと感じました。
おれたちの伝承館は、8月16日(水)まで無休で、8月17日(木)以降は週末のみの開館、もしくは不定期での開館になるそうです。「アート」を通じて、福島の海に触れてみたい方は、おはやめにお越しください。
海と日本プロジェクトinふくしまレポーター:前野
イベント名 | おれたちの伝承館 |
日程 | 2023年7月19日 |
場所 | 福島県南相馬市小高区2-23 |