みなさんこんにちは。海と日本プロジェクトinふくしま、レポーターの小松です。いわきの秋の食卓に欠かせないのが、さんまのみりん干し。昨年まではしばらくのあいだ低調だったさんま漁ですが、今年は序盤から比較的好調ということもあり、北海道や三陸の港にコンスタントに水揚げされています。
さんまの代表的な加工品である「みりん干し」の製造も最盛期を迎えています。じつはこのさんまみりん干し、いわき市小名浜が発祥の地であり、最盛期には町内に20社以上も加工業者があったそう。現在はその数は減っていますが、秋になると、みりん干しを製造する業者がいくつもあります。
今回取材にお邪魔したのは、いわき市小名浜にあるマルデンタ。明治時代に創業され、現在の社長、小野利仁さんで4代目となる老舗です。工場にお邪魔すると、ちょうど、さんまの切り身をしょうゆベースのみりんだれに漬け込む作業中でした。静かな工場に、女性スタッフが作業する音が響き渡ります。
小野社長に話を伺うと、「品質の高いさんまみりん干しは小名浜だからこそできた味だ」と語ります。というのも、小名浜は港が南を向いており、冬でも安定した日照量があるそう。さらに、港の北側に低い山があり(三崎公園のあるところ)、冬の時期に北風ではなく「西風」が吹き込むといいます。
小野社長によれば、冷たい北風は干物の加工には冷たすぎるため、適度な温度がある西風がみりん干しに向いているそうです。こうした風の環境だけでなく、豊富な日照量という「偶然の自然環境」がみりん干し製造につながっているのだそうです。
近年はさんまの不漁が続いていたため、この数年でみりん干しの製造業者もさらに見せじまいが続き、現在では、小名浜町内で5つほどしか加工業者が残っていないそう。だからこそ小野社長は、細々とでもいいから、伝統製法にこだわってものづくりを続けていきたいと抱負を語ってくださいました。
秋から冬にかけて、寒くなると思わず恋しくなるのが甘じょっぱいみりん干し。ご飯やお弁当のおかずにも最高ですし、細かく刻んで「ひつまぶし」のように食べるのもおすすめです。まだ食べたことがないという方も多くいらっしゃるはず。ぜひ今年は、小名浜発祥のさんまみりん干しを試してみてはいかがですか?