筑波大生現地調査レポ7 資源回復した豊かな海の恵みを価値にするために

2018-8-20
海と日本PROJECT in ふくしま

 

今年、海と日本プロジェクト in ふくしまでは、福島の海の復興の現状や風評被害について現地調査を行う、筑波大学社会学類・五十嵐泰正ゼミとコラボ。学生目線で、そのリサーチ結果や感想をレポートしてもらう連載企画をスタートします。初めて福島の海を訪れる学生たち。福島の海は、彼らの目にどのように映るのか。これからの「海づくり」の参考にすべく、長期的に連載していきます。

 

筑波大生現地調査レポ vol.7 

資源回復した豊かな海の恵みを価値にするために

こんにちは!海と日本プロジェクトに協力させていただいています、筑波大学社会学類3年の山本和音です。

7月21日(土)に、いわき海洋調べ隊「うみラボ」のメンバーの方々と学生たちとの懇親会が開かれました。そのなかで、釣り船長栄丸の船長、石井宏和さん(41)にお話をきくことができました。それは、石井さんの漁師としての過去や現在、福島の海の現状と今後など、こうした話を聞く機会のない私たち学生にとって、とても貴重なものでした。今回はその様子をお伝えしたいとおもいます。

石井さんのご出身は、福島県双葉郡にある富岡町。お父さんもおじいさんも底曳漁の漁師でした。長男であった石井さんは、将来漁師を継ぐものだという周りの思いや、石井さん自身もほかに特にやりたいことがなかったことから、漁師という仕事を継いだといいます。しかし、底曳漁の仕事はきびしいものでした。2日間漁をして、朝に市場に魚を出してすぐにまた漁に出なければいけない日もありました。冬場はさらにつらかったといいます。

そんななか、石井さんは家の船が1台余っていることに思いあたり、遊漁船でも始めてみようかと思ったそうです。遊漁船とは、お客さんを乗せて釣りなどをする船のことです。遊漁船を始めてから、石井さんは客商売にはまり、お客さんに自己充実感や幸せを与える大切さを知ったといいます。「今はものすごく遊漁船が楽しいですね。」と笑顔で語ってくださった石井さんの表情は、遊漁船の船長という仕事への充実感であふれていました。

そんな石井さんは現在、相馬双葉漁業協同組合富熊地区の地区代表というお立場。就任されたのは東日本大震災のあと、2013年のことだったといいます。同じ立場の方でも年上の方がたくさんいらっしゃる環境のなかで、どのようなことを心がけていますか?という質問に対しては、「そりゃあ気は使いますよ。俺なんか(漁協の中で)発言権はあっても発言力は弱いからね(笑)」と冗談交じりにこたえてくださいました。

しかし、地区代表になったのは、石井さんが自分の思いを言いたい、伝えたいというはっきりとした思いがあったからでした。「震災後、下の意見というのはなかなか上の重要な会議にまで上っていかなかった。そのときに、自分がその(地区代表という)立場になればいいだけの話だ、って思ったんです。代表はなりたくない人がなってもロクな結果にならない。じゃあ俺がやろう、っていうシンプルな考えですね。」このような石井さんの思いや、富熊地区の組合員がもともと少なかったことが代表就任の背景にあったといいます。 現在石井さんは、福島の海の今後を考えたさまざまな活動にご尽力されています。

そのひとつが資源管理型漁業への転換に関する取り組みです。震災後、漁ができなかった時期を経て、今の福島の海は漁業資源が豊富です。その状況が資源管理型漁業に切り替えるきっかけになるのではないかと石井さんは考えています。「震災前の漁業のスタイルに戻るのが果たして正解なのか、ということです。せっかく増えた資源を、またとって減らすのは違いますよね。」

 

 

資源管理型漁業への転換

  1. 現在の長栄丸の母港、久之浜漁港にて
  2. 長栄丸で釣りを楽しむお客さん  
  3. うみラボメンバーとの懇親会

 

石井さんは福島の海の未来のため、新たな漁業の姿を模索しています。 また、福島の魚介類と他県のものとの差別化をはかるために、MSCやMELの認証を取得する活動にも取り組まれています。

MSCとはMarine Stewardship Councilの略称で、日本語では「海洋管理協議会」といいます。持続可能な漁業の普及を目指す国際団体です。MELはマリン・エコラベル・ジャパンの略称で、こちらも水産資源の持続的利用を目指す日本の団体です。これらの認証を取得することで、福島の魚に特別な価値を付与する考えです。

しかし、これらの認証の取得にあたって、いくつかの課題もあります。認証を取得するときや、取得後の維持のために多くの費用がかかるというのがそのひとつです。また、認証を取得したとしても、消費者の人々がどのくらいその認証のことを知っていて、受け入れられるのかという懸念もあります。それでも、福島の魚は今年3月に7魚種がMELの認証を取得しました。

このことを受け石井さんは、福島の漁業が良い方向に向かっていると感じています。 石井さんのお話をきいて、福島の海は今までとは違う姿に生まれ変わろうとしている、ということを実感しました。

しかし、その途中には先ほど述べた課題や、原発の廃炉状況やトリチウム水の流出に関係する風評というさらに大きな課題があるのも事実です。それらを乗り越えるための新たな漁業のモデルを提案していくことが必要だとおもいます。引き続き、資源管理型漁業や水産資源の持続的利用について、学生の視点から考えていきたいとおもいます。

 

イベント名筑波大学社会学類・いわきでの調査実習
参加人数2018年7月21日
  • 「筑波大生現地調査レポ7 資源回復した豊かな海の恵みを価値にするために」
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