今年、海と日本プロジェクト in ふくしまでは、福島の海の復興の現状や風評被害について現地調査を行う、筑波大学社会学類・五十嵐泰正ゼミとコラボ。学生目線で、そのリサーチ結果や感想をレポートしてもらう連載企画をスタートします。初めて福島の海を訪れる学生たち。福島の海は、彼らの目にどのように映るのか。これからの「海づくり」の参考にすべく、長期的に連載していきます。
筑波大生現地調査レポ vol.10
小名浜のカツオ 震災と風評を乗り越えて
こんにちは!海と日本プロジェクトinふくしまに協力させていただいています、筑波大学社会学類3年の横山裕司です。
7月23日にいわきのカツオ巻き網船団の船主である酢屋商店の社長、野崎哲さんにインタビューさせていただきました。福島県漁協の会長でもあり、福島の漁業を代表する人とも言える野崎さんが福島漁業、特にカツオ漁業の現在と今後について語ってくださいました。
4月から9月にかけて黒潮沿いに三陸沖まで北上するカツオの群れを追いかけて、巻き網漁でカツオを捕り近くの漁港に水揚げをするカツオ漁船。酢屋商店はその大船団を所有する船主です。現在は300トン型の巻き網漁船と運搬船の2艘の船団と、250トン型の巻き網漁船と運搬船そして99トン型の探査船の3艘からなる船団の、2つの船団で操業されているそうです。
東日本大震災は休業中で乗組員もいない3月のことだったため、船を津波から避ける事ができず、当時7艘あった船のうち5艘が被害を受けたそうです。それでも乗組員は無事で、国の補助もあって新たに船を準備できたことが救いでした。
そして小名浜港も津波の被害を受けましたが、漁場が沖合で、捕った魚は漁場近くの港に場所にこだわらずに水揚げすればいい廻船での漁業なのですぐに操業を再開できたと言います。今では2つの船団に30名と35名の合計65名の乗組員がいるとのこと。
しかしながらカツオの資源量自体が減少している事もあり、酢屋商店のカツオの水揚げは、福島県と他県への水揚げを合わせて震災前の平成22年の約半分しかない状況だそうです。
特に、福島の港(小名浜・中之作)に水揚げされたカツオについては、東京の築地市場を始めとした消費地市場への出荷が、風評の影響があって打撃を受けているとの事でした。「漁場は同じなのに」水揚げが福島というだけで仲買人からも避けられてしまうという言葉が印象的でした。
試験操業の規模が少しずつ拡大し、沿岸漁業の回復への道筋がある程度見えてきた今、いよいよ本格的に、震災前県内で差大の水揚げ額を誇っていたカツオの回復に取り組んでいくと力強く語ってくれました。酢屋商店による水揚げだけでなく、他県の船にも小名浜・中之作に水揚げしてもらって安定的な供給、そして小名浜のカツオとしてのブランド化を目指していくそうです。
また流通の面でも試行錯誤をしていく必要があると野崎さんは考えています。そんな中、今年5月から大手スーパーであるイオンの都内5店舗にて福島の魚の対面販売コーナーが常設されるなど、少しずつカツオをはじめとした福島の魚がお店に並ぶ機会も増えており、ここから小名浜のカツオに注目が向けられていきそうです。筑波大社会学類の学生たちのプロジェクトでは、これから都内の店舗にてお客様の反応もお伝えしていこうと思います。
イベント名 | 筑波大学社会学類・いわきでの調査実習 |
日程 | 2018年7月23日 |