今年、海と日本プロジェクト in ふくしまでは、福島の海の復興の現状や風評被害について現地調査を行う、筑波大学社会学類・五十嵐泰正ゼミとコラボ。学生目線で、そのリサーチ結果や感想をレポートしてもらう連載企画をスタートします。初めて福島の海を訪れる学生たち。福島の海は、彼らの目にどのように映るのか。これからの「海づくり」の参考にすべく、長期的に連載していきます。
筑波大生現地調査レポ vol.17
地元の方を想う「れすとらん さすいち」
みなさん、こんにちは!この度、海と日本プロジェクトに参加させていただいております、筑波大学社会学類3年の久保です。今回は合宿初日に昼食をいただいた、レストラン「さすいち」の女将さんである小野嘉子さんにお話を伺いました。
「れすとらん さすいち」は小名浜港を臨む一角「いわき・ら・ら・ミュウ」から少し歩いたところにあります。隣には「さすいち直売所」を構えており、女将さんのお父さんこだわりの干物などを揃えています。セルフで好きな魚料理やお惣菜を選んで、レジで会計スタイルになっており、その日の気分で好きなお魚を好きな分だけ、いただくことができます! 鯖の塩焼き、鰹の竜田揚げ、海鮮丼やしらす丼など、種類も豊富でした。
現在構えている店舗は、移転や東日本大震災を経て3代目であり、津波によって崩壊した後、今の場所にお店を立てるまでに2年半かかったといいます。その期間は家業を継ぐべきなのか悩み、継ぐと決意した後も毎日が葛藤だった、人生で一番長く感じた2年半であったと女将さんは振り返ります。
戻りたいと願う従業員やお客さんの要望も多く、そういった人たちのために「何かできるはず」と一歩を踏み出したものの、震災後物価が高騰し、お店を建て直すためのお金を準備するのも大変だったと言います。また、お店が建っても魚が取れなかったらどうしよう、という不安は常にあったとおっしゃっていました。
でも、お店を継ぐと決意してから営業再開するまでの2年半の間、SNSなどに新しいお店を建てる過程やお魚に関する情報を毎日発信することで、応援して下さる仲間を作り、情報を共有することが励みになったと言います。
そんな葛藤や不安を乗り越え、完成した3代のお店も今年で5年目。今の原動力は何か女将さんに聞いてみました。女将さん自身、毎日お刺身を食べたいほどお魚が大好きであり、震災当初はお刺身が食べられないストレスを感じていたと言います。そんな女将さんにとってお年寄りをはじめとする地域の方々に、美味しいお魚を提供できることが何より嬉しいと語ってくれました。
「れすとらん さすいち」では、決まったメニューがあるというより、その日入荷したお魚を一番美味しく食べられる状態で提供することを心がけています。家庭では出しづらくなった煮魚や焼き魚などを、持ち帰って食べたい地域の方達のためにお惣菜としても取り揃え、一人でも食べられるように少し小さく作るといった気遣いも見られます。
最後に、女将さんは、いつでも温かいご飯と美味しいお魚を届けられるこの仕事は最高の職業であり、おばあちゃんになってもそこだけは変わらずずっと続けていきたい、とおっしゃっていました。
地元に、いつでも新鮮なお魚をすぐ食べられる場所があることを羨ましく思うと同時に、地元の方を想う女将さんのお話を聞けたことは貴重な経験となりました。
皆さんも是非、小名浜に行った際には「れすとらん さすいち」に訪れてみてください!
イベント名 | 筑波大学社会学類・いわきでの調査実習 |
日程 | 2018年7月21日 |