福島第一原発の事故を受け、大幅に制限された漁業を余儀なくされている福島県。漁業に携わる人たちは、さまざまな葛藤のなかで、日々を送っています。しかし、葛藤があるからこそ、海とわたしたちはいったいどのように向き合っていけばいいのかのヒントや知見もまた、数多く残っているのも事実。ここでは、福島で漁業に関わる人たちの声を少しずつ集めていきます。
第2回は、いわき市小名浜のさんま専門の加工業者「上野台豊商店」をご紹介します。
港町小名浜といえば、カツオとサンマ。夏から秋にかけ、小名浜港には毎週のように大型船が寄港し、新鮮な魚を水揚げしていきます。上野台豊商店は、さんまの加工業者。大量のさんまを買い付け、生のままスーパーなどに卸販売したり、さんまの干物やハンバーグなど加工用のさんまを取り扱い、小名浜の台所の屋台骨を支えてきました。
しかし、東日本大震災と原発事故により、水揚げ量、流通量ともに大きく落ち込んでしまいました。事故前から課題になっていた高齢化や人手不足もさらに深刻化。代表の上野臺優さんは、「このままでは未来に引き継ぐべき食文化が断絶してしまうのではないか」と、強く感じたそうです。
そこで、「代々さんまを扱ってきた家だからこそ、伝統を重んじながらも、若い人たちに届けられる商品を作らなければ」と一念発起。大手飲料メーカーの支援を受け、さんまの郷土料理を商品化していく「小名浜さんま郷土料理再生プロジェクト」を立ち上げ、現在、さまざまな商品開発を行っています。
「震災後、新しい名物を作らなければ生き残れないといろいろなものを研究しましたが、結局、自分たちが育てられてきたさんまに戻ってきました。宝物をあちこち探す必要はなかったんです。ずっとここにあったんですから」と上野臺さん。震災があったからこそ気づくことができた「地元の強み」。上野台さんに、迷いはありません。
イベント名 | 小名浜さんま郷土料理再生プロジェクト |
場所 | 上野台豊商店 福島県いわき市小名浜吹松3−8 |