レポート
2024.12.21

おそめの海町さんぽ〜海ビューを切り取る額縁編〜

 

みなさん、こんにちは! 海と日本プロジェクト in ふくしま、レポーターの染矢です。

12月に入ってからますます寒さが身に染みる今日この頃。海風を浴びながら浜辺をおさんぽしていた季節が恋しくなります。ということで、今回は季節を少し逆戻して、秋に訪れた今年最後のおそめの海町さんぽをレポートしていきます!

舞台に選んだのは、いわき市中部沿岸にある沼の内。漁港のある小さな港町で、人気の釣りスポットとして知られています。いつもは車で通りかかるぐらいでしたが、おそめレーダーがなにやらおもしろそうなものが潜んでいそうだと反応し、以前から気になっていた場所です。

 

海が見えない場所でも海を感じる

  1. 自然に囲まれた賢沼。カモや鯉の姿も
  2. 鳴り響く機械音に思わず興味をそそられる
  3. 庭に装飾された貝殻。向きまで揃えられていた

雲ひとつない秋晴れに恵まれた10月某日、沼の内にはじめて上陸。朝早い時間とあって、空気も澄んでいて気持ちの良い1日の始まりです。

最初にやってきたのは、密蔵院賢沼寺(沼ノ内弁財天)。お寺の本堂に「沼の内にお邪魔します」とごあいさつを済ませ、隣にある賢沼へ。

鬱蒼と生い茂る木々が沼を縁取り、朝日に照らされた沼が広がっています。東屋のベンチに腰を掛け、だれもいない静寂なひとときをしばし満喫。

実はこの沼には、かつてオオウナギが生息していたそうで、多くの人がその姿を見に訪れたそう。その情報を得た私は、人生初の天然ウナギを見られるビッグチャンスだ!と意気込み目を凝らしてみましたが、見えたのは餌をねだる大きなコイだけ。

ひと昔前に比べてウナギの数は著しく減少したようで、現在は環境保護に力を入れ、原因究明の調査が進められているようです。

お寺の周りを歩いていると、木々の合間から沼の内の町並みと真っ青な海の景色が見渡せる隠れ絶景スポットを発見。町の風景を見て、これからどんな景色に出会えるのかワクワクしてきました!

お寺を後にして住宅街へ。瓦屋根の昔ながらの民家が目立ち、車1台が通れるぐらいの細い路地を進みます。建物で視界を遮られ海の姿は見えませんが、風に乗ってきた潮の香りが漂います。

海は目だけでなく、嗅覚でも感じられる……。海の新たな一面を発見したようで、思わずににやけてしまいます。

少し歩くと、干物加工所やかまぼこ工場など水産加工場がポツポツと点在していました。「ガッガッ、ゴッゴッ」とどこからか規則正しくリズムを刻む機械音が聞こえてきます。自宅と併設しているところが大半で、海を生業とする人たちが多く住んでいることが分かります。

他にも、あるお宅では石の代わりに白い貝殻を使って庭を装飾していたりと、とにかくいたるところに海要素が散りばめれていました。

海の姿が見えなくても、町なかを歩くだけでこれほど海を感じることができた海町は初めてです!

震災が生んだ新たな景色

  1. 弁天川水門の中央に立つと海ビューが見下ろせる
  2. 防波堤に置いただけで立派な映えスポットに変身
  3. この日の海は激しい波音を立てるほど荒れていた

いよいよ、沼の内海岸が近づいてきました。まず目を惹いたのは、みるからに頑丈そうな大きな弁天川水門。津波から町を守るため、県内で最初に建てられたそう。

町なかには弁天川と呼ばれる川が流れており、東日本大震災の発生時、ここから津波が溯上し、大きな被害があったそうです。解説には、「地元のシンボルとして愛されてほしい」と書かれていました。

周りになにもない海岸に、不自然に設置されたコンクリートの壁……。地元の人たちはどんな気持ちでこの水門を見ているのだろうと複雑な気持ちになり、どうしても私はこの水門を前向きなシンボルとして受け止めることができません。

しかし、水門のなかから海を覗いてみた瞬間、その考えが一気に吹き飛びます。果てしなく続く海岸線を水門が額縁となり海の景色を切り取ってくれることで、ひとつの絵画を見ているかのような美しさを演出しています。これは確かにシンボルと言えるのかもしれません。

命を守る水門が、実は絶景を際立たせる額縁の役割も果たしていたのです。この日いちばん、いや、おそめさんぽ史上いちばんの発見となりました。

少々興奮しながら、そのまま海岸沿いの防災緑地に沿っておさんぽ。他の海町と同じように分厚い防波堤がどこまでも続いています。

秋晴れのこの日は、あちこちにトンボが飛び交います。なかには防波堤でひと休みするトンボの姿も。ある場所には、誰かが意図的に置いたのか防波堤の上に貝殻が置かれていました。背景の真っ青な海と合間って、写真映えしています。

防災のために作られた防波堤は、トンボの休憩所や映えスポットにもなる。防波堤ができたことで失われた景色もありますが、逆に防波堤があるからこそ生まれた美しい一面もあるのだと感じました。

その後も青い空と海の美しい景色につられ、気づけば相当長い距離を歩いていました。身体はへとへとになったものの、気分は爽快! 沼の内をじっくりと練り歩いたからこそ、多くの気づきや発見がりました。

歩けば歩くほど、町の魅力がどんどん見えてくる。それこそがまちあるきの醍醐味なのだと改めて感じました。来年はどんな海町に出会えるのか今から楽しみです!

レポーター紹介

染矢 優香(そめや・ゆか)

埼玉県所沢市出身。2021年にいわき市へ移住。旅行ガイドブックの編集・ライターを経て、現在いわき市でフリーランスとして活動中。

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