レポート
2024.08.15

常磐ものの新しい仲間たちを学ぼう、体験しよう! 「シン・常磐もの調査隊」ついに発進!!(前編)

福島県の海の現状と、近年、新たに漁獲されている魚の生態や特徴を学ぶ体験型の学習プログラム「シン・常磐もの調査隊」が、7月31日、8月1日の2日間にわたって、いわき市各地で開催されました。

福島県内に住む20名の小学生が一堂に会し、船に乗ったり、水族館でさまざまな体験をしたり、研究所の先生から話を聞いたりとさまざまなリサーチを行い、最終的にはその学びを「コラージュ」にして仕上げるという充実プログラム。その模様を、イベントに参加した地域活動家の小松理虔が2回に分けてレポートしていきます。

福島の海の変化を学ぶ

  1. 学びのパートナーはアーティストとして活動する金沢裕子さん
  2. 小名浜漁港で漁船に乗り、イセエビを採る刺し網漁を体験!!
  3. 現役の漁師から網の巻き取りなど操船方法を学んで大興奮

黒潮と親潮が混じり、日本有数の漁場として知られる福島いわき沖。そこで採られる魚たちを「常磐もの」と呼びますが、近年、海水温の上昇で、これまでは漁獲されなかった魚たちが水揚げされるようになっています。そんな新しい常磐ものを「シン・常磐もの」と名づけ、海の環境の変化、魚たちの生態や加工の具体的な方法、生産者や研究者の思いなどを2日間で学ぼうというのが、この「シン・常磐もの調査隊」。

2日間の学びは、コラージュとして描き、いわき市でアーティストとして活動する金澤裕子さんの協力のもと、そのコラージュとキャッチコピーからなるポスターを制作し、JR常磐線を走る電車の中吊りとして掲示する、という計画になっています。

まず子どもたちが訪れたのが小名浜漁港。近年水揚げが増えているイセエビを採るための量、刺し網漁の方法を、なんと船上から学びます。漁船はおろか、船自体に初めて乗るという子どもたちが多く、船上は大興奮でしたが、漁について、船の操作について、そして漁師の普段の仕事ぶりについて、いろいろな話を聞きながら、漁の大変さ、海の変化、漁師たちの工夫について学びました。

イセエビは、どんなふうに漁獲されるのか。漁師たちは、普段、どんなところに海の環境の変化を感じるのか。そんな話を海の上で聞くことができるので、学びの効果も高いはずです。子どもたちは興味深そうに漁師たちの話に耳を傾け、盛んにメモを取っていました。

アクアマリンふくしまでタチウオについて知る

  1. 地元のスーパー「マルト」が販売するスペシャルなお弁当を実食
  2. カツオの血合いまで入ったカツを美味しくいただきました
  3. アクアマリンふくしまの研究者、松崎さんからじっくりと解説

小名浜漁港を後にした子どもたちは、アクアマリンふくしまに到着後、お弁当タイム。普通のお弁当じゃありませんよ。常磐もののカツオを使った「カツオフライ」が入っていて、目や耳だけでなく「舌」でも常磐ものの魅力を味わえるスペシャル弁当。子どもたちからも「おいしい!」「うまい!」という声が聞こえていました。

ランチの後は、アクアマリンふくしまの潮目の大水槽を見学し、研究員の松崎浩二さんから、この数年増えているタチウオ、イセエビについて生態、特徴などの説明を受けました。クイズ形式で大変わかりやすくお話しいただいたこともあり、子どもたちも気候や海水温の変化について学びながら、福島の海の現状への関心を高めていたように感じます。

さらに、説明の後には、水族館のバックヤードツアーへ。普段は見られない水族館の仕事を知ることができただけでなく、潮目の大水槽を泳ぐ魚たたちへの餌付け体験もできました。水槽にばら撒くと、魚たちが勢いよく食いついてきます。普段は体験できない場所での学びだからこそ、印象強く、そこで学んだことが定着していくのかもしれません。子どもたち、とにかく楽しそうでした。

じっくり座学で、福島で漁を続けるための方策を知る

  1. オリジナルのノートも作成。学んだことをメモしていきます
  2. 福島県水産海洋研究センターの根本芳春副所長からもレクチャー
  3. 夕方までじっくりと学んでくれた子どもたち。お疲れ様でした!

アクアマリンの次は、近くにある県水産海洋研究センターへ向かい、漁獲量が極端に減ってしまったコウナゴについて学びました。講師は福島県水産海洋研究センターの根本芳春さん。これまで長く、福島の海を調査してきた専門家です。主に座学で、コウナゴという魚の生態、資源量が減少した背景、漁師が行ってきた対策などについて話をしてくださいました。

印象的だったのは、魚の温度の感じ方についての説明でした。人間にとっては、1度の水温の違いはほとんど感じられない小さな差ですが、魚にとって水温が1度違うと、感覚的には人間にとっての10度と同じくらいだそうで、魚種によってはほとんど生息ができなくなるほどの温度差だということでした。地球温暖化による海水温上昇で魚の生息域が大きく変化していますが、水温が上昇することでその海域に暮らせなくなるほどの衝撃を受ける魚がいることを学ぶことができました。

具体的には、サケ、マダラ、ミズダコなどが減少し、ヒラメ、トラフグ、マダコなどの水揚げ量が増えているということです。特にトラフグは取引される値段が高いため有効活用が期待されますし、ヒラメも高級魚として知られており、常磐ものの筆頭として定着してくると新たな観光資源にも成長できそうです。そんなことを子どもたちと一緒に、体験的に学ぶことができる時間は大変貴重だなと感じました。

東日本大震災後、漁業は大きな影響を受け、いまだに復興の途上にありますが、増えているもの、これから育ちそうなものに目を向けると、課題だけが横たわっているわけではない、ということも見えてきます。福島の海の課題も学びつつ、未来になにをつなげていくのか。自分たちの持っている魅力や宝物を感じる初日となりました。

イベント詳細

イベント名シン・常磐もの調査隊
参加人数20名
日程2024年7月31日、8月1日
場所アクアマリンふくしま、福島県水産海洋研究センター、小名浜港
主催一般社団法人 ふくしま海と緑のプロジェクト

レポーター紹介

小松 理虔(こまつ・りけん)

海と日本プロジェクトinふくしま専任事務局員。いわき市小名浜を拠点に「地域活動家」を名乗り、地域を舞台とするさまざまな活動を行っている。

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