福島県の海の現状と、近年、新たに漁獲されている魚の生態や特徴を学ぶ体験型の学習プログラム「シン・常磐もの調査隊」が、7月31日、8月1日の2日間にわたって、いわき市各地で開催されました。
福島県内に住む20名の小学生が一堂に会し、船に乗ったり、水族館でさまざまな体験をしたりとさまざまなリサーチを行い、最終的にはその学びを「コラージュ」にして仕上げるという充実プログラム。その模様を、イベントに参加した地域活動家の小松理虔が2回に分けてレポートしていきます。今回は、その後半です!
黒潮と親潮が混じり、日本有数の漁場として知られる福島いわき沖。そこで採られる魚たちを「常磐もの」と呼びますが、近年、海水温の上昇で、これまでは漁獲されなかった魚たちが水揚げされるようになっています。そんな新しい常磐ものを「シン・常磐もの」と名づけ、海の環境の変化、魚たちの生態や加工の具体的な方法、生産者や研究者の思いなどを2日間で学ぼうというのが、この「シン・常磐もの調査隊」です。
2日間の学びは、コラージュとして描き、いわき市でアーティストとして活動する金澤裕子さんの協力のもと、そのコラージュとキャッチコピーからなるポスターを制作し、JR常磐線を走る電車の中吊りとして掲示する、という計画になっています。
2日目、まず子どもたちが訪れたのが物産館「いわき・ら・ら・ミュウ」。シン・常磐ものの魚種「イセエビ」がどのように加工され、販売されているかを学ぶためです。いわき・ら・ら・ミュウで海産物店「小名浜あおいち」を経営する上野台豊商店の上野臺優社長から、イセエビの商品の魅力、具体的な加工方法やお客さんの反応まで、さまざまな話を聞きます。子どもたちは興味深そうに社長の話に耳を傾け、盛んにメモを取っていました。
するとそこに、いわき市出身の芸人、あかつさんが登場。あかつさんと一緒にいわきの魚、シン・常磐ものを学ぶとともに、あかつさんが考案した体操も楽しみました!
午後は、場所を移して調理体験。常磐ものの魚を使った商品づくりなどに取り組んでいる、小名浜海星高校の生徒たちと、シン・常磐もの料理「タチウオチップス」にチャレンジです。薄切りにしたタチウオの身に塩や青のりなどで味をつけ、揚げるだけですが、むちゃくちゃ香ばしく仕上がり、子どもたちも「おいしい!」と大絶賛!!
1日目にしっかりと学んだタチウオを、しっかり料理して「食べる」ところまでを学ぶから、学んだ内容がしっかりと定着していくんです。頭で学ぶだけじゃない。手で、舌でもしっかりと学んでいくのが、シン・常磐もの調査隊です。
そして最後は、今回の旅で学んだ2種類のシン・常磐もの、イセエビとタチウオを「コラージュ作品」にしていきます。講師を務めた金沢裕子さんの発案で、子どもたちにも作りやすいような制作キットを用意。まだ興奮冷めやらぬうちに、作品を仕上げていきました。
絵が得意な子も、紙を切るのが苦手な子も、自由に作品を仕上げていく姿に、子どもたちの想像力の豊かさ、そして学ぶことへの貪欲さを感じずにいられませんでした。こうして学ぶことで、海への関心や感謝が生まれ、自分たちの暮らしや食に対するまなざしが磨かれていくのでしょう。
今回作成されたコラージュは、一旦、金沢さんが画像化し、その作品を再構成して、1枚のポスターに仕上げてくれることになっています。さらにそのポスターは、常磐線の電車の「中吊り」として展示される予定。子どもたちの作品がどう電車を彩るのか、とても楽しみです!
イベント名 | シン・常磐もの調査隊 |
参加人数 | 20名 |
日程 | 2024年7月31日、8月1日 |
場所 | アクアマリンふくしま、いわき市中央卸売市場 |
主催 | 一般社団法人 ふくしま海と緑のプロジェクト |
海と日本プロジェクトinふくしま専任事務局員。いわき市小名浜を拠点に「地域活動家」を名乗り、地域を舞台とするさまざまな活動を行っている。