レポート
2018.05.07

福島の海の資源回復を体感 いわき沖でカレイ釣り

 

2011年に発生した東京電力福島第一原発の事故により、福島の漁業は甚大な被害を受けました。「試験操業」という形式の漁業を余儀なくされ、その水揚げ量は、震災前の10%〜20%とも言われます。しかし、その一方で、水揚げ量が減ったことにより、福島県沖の魚の固体数は大きく回復。福島の海は、震災前とは比べ物にならないほど豊かな資源を持つ海に変わりつつあります。その今を体験しようという調査が、5月6日、いわき市で開催されました。

資源調査を兼ねたカレイ釣り。主催したのは、2014年から福島県沖の魚の放射線量を計測する活動を続けている、いわき海洋調べ隊「うみラボ」です。これまでは、福島第一原発沖の調査を行うことが活動の軸でしたが、国の基準値を超える魚がこの2年以上見つかっていないこと、計測しても多くが検出下限値未満であることから、線量測定よりも「資源回復」に着目した釣りにシフトしようと、今回始めて開催されました。

参加したのは、親子連れなど14組の参加者。朝6時。いわき市北部の久之浜港を出発し、いわき沖の水深40mほどの地点でカレイ釣りにチャレンジです。この日初めて釣り竿を握ったという人も、餌の付け方や竿の動かし方などを教えてもらうと、すぐに釣れるようになります。釣行はおよそ6時間と長丁場ですが、参加者は、時間の経過を忘れたように福島沖の海を感じながら、釣りを楽しんでいるようでした。

 

身体いっぱいに海を感じる、それが船釣の魅力!

  1. みなさん、釣れたときの笑顔が素晴らしいんです!
  2. 親子連れの参加者。父と子が1本の竿を握る充実した時間。
  3. 子どもたちにも簡単に釣れるほど魚がいるということ。

 

震災前は、この海域ではカレイに特化した釣行は実施されていなかったそうです。釣り船の船長によれば「これほど形のいいカレイが釣れるのは、震災前では考えられなかった光景です。間違いなく資源量が回復している証拠」と、資源回復にかなりの手応えを感じている様子でした。

カレイ以外にも、ヒラメやメバル、アイナメなど、近海の海底で獲れる魚たちの「大型化」や「資源回復」が注目されています。震災後5年の時点では「震災前の5倍ほど網にかかるようになった」と話す漁師もいました。福島の魚たちは、安全性が確認され、しかも確実に増えているのです。

すでに福島県が、ヒラメやカレイ類など数魚種で、資源管理された漁業に与えられる国際認証「MSC」の取得を目指すことが報じられています。日本全国の港で「魚の水揚げ量減少」が叫ばれるなか、福島県の漁業は「日本でほぼ唯一資源が回復した海域」として、今後大きな注目を浴びるかもしれません。

試験操業はかなり限定的な漁であり、水産業に関わる人たちにとっては大きな足かせになっていました。しかし一方では、このような「恵み」をもたらしていたことになります。原発事故は、福島の海から多くのものを奪っていきました。だからこそ、この宝物は、大事に守っていかなければならないのではないでしょうか。

 

食べても美味しい常磐のマガレイ

  1. 大きなマガレイたち。獲り尽くさず資源を守っていきたいもの。
  2. 釣れたマガレイは、氷詰めにして持ち帰りました。
  3. 小麦粉を振ってムニエルに。淡白な味わいで上品です。

 

この日、もっとも多く釣れたのがマガレイ。煮付けやムニエルにするとおいしい、ということなので、切り身にし、小麦粉とクミンを振りかけてムニエルにして頂きました。自分で釣った魚だからこそ新鮮でおいしく、海にも思い入れが生まれる。噛み締めるほど、そんなことを感じることができました。

回復してきた漁業資源を活かすも殺すも私たち次第。魚が限りある「資源」なのだということを意識しながら、次の世代にも、このおいしい海の宝物を引き継いでいくために、どんなことができるか。まずは、こうして海を知ろうとすること、そして楽しんでしまうこと、味わってしまうこと、そこからですね! 

【専任事務局員:小松】

 

イベント詳細

イベント名うみラボ主催「カレイ資源調査」
参加人数19名
日程2018年5月6日(日)
場所いわき沖
主催いわき海洋調べ隊うみラボ
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