レポート
2019.09.26

【海ごみレポート6】リサイクルよりも大切なこと

 

みなさんこんにちは、海と日本プロジェクト in ふくしま事務局レポーターの森亮太です。

美しい海を未来に残すためには、海洋汚染のことをちゃんと知って、私たち一人ひとりに何ができるかを考え、行動していく必要があります。そのためにまず必要なのが海のごみを知ること。ということでスタートした海ごみレポートは今回が第6回。海ごみの中でも特に問題となっているプラスチックごみ。根本的な解決にはどのような取り組みが必要なのでしょうか。

 

海ごみレポート 第6回
リサイクルよりも大切なこと

前回のレポートでは、海洋放出されるプラスチックの大半が中国・東南アジア・インドなどのアジア諸国から出ていることをお話ししました。しかしながら、プラスチックを大量に排出しているのは日本、アメリカをはじめとする先進国。そのような国が、資源管理がうまくなされていない東南アジア・中国等に「資源」として廃プラスチックを輸出することで、結果的には海洋放出につながっていることがお分かりいただけたと思います。

2017年11月には中国が廃プラスチックの輸入禁止措置を決めたほか、2019年5月には「バーゼル条約」の第14回締約国会議(COP14)にて汚れたプラスチックごみの輸出入の制限を決めました。一時期リサイクル大国だった中国には、世界の廃プラスチックの6割が集中していたとも言われています。行き場のなくなった廃プラスチック。大量にプラスチックを生産・消費している先進国諸国では抜本的な取り組みが進められることになりました。

もちろん、日本は大量にプラスチックを生産・消費している先進国の一つです。プラスチックの生産量は世界3位、一人当たりのプラスチックごみ排出量はアメリカにつぐ世界2位で、世界のプラスチックごみ問題の中でも中心の存在です。一方で、日本の取り組みは、欧州連合(EU)などに比べて遅れているとも言われています。昨年の先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、プラごみ削減に向けて数値目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」への署名をアメリカとともに拒否し、日本は批判を浴びたことがあります。

 

マイクロプラスチックの海洋分布

 

ここで、どのような取り組みが一番大切なのでしょうか。プラスチックというと、リサイクルというイメージが一番強い方も多いと思います。しかしながら、もっと優先すべき取り組みがその前にあるはずなのです。UNEP(国連環境計画)の使い捨てプラスチックの報告書では、ごみは以下のように管理するべきだ、と書かれています。(「海ごみへとつながる」の部分は筆者加筆)

 

マイクロプラスチックの海洋分布

 

皆さんの中に、「3R」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。「3R」とはリデュース(Reduce)、リユース(ReUse)、リサイクル(Recycle)の頭文字のRを取ったものです。この図にもしっかりと書かれていますね。日本国内では、その中でもリサイクルについてはかなり議論や取り組みが進んできていると感じています。ごみの分別では、しっかりとプラスチック容器を洗ってごみに出しますよね。リサイクル、それも大切なごみの取り扱い方です。

しかし、リサイクルよりもプラスチックを使う量を減らすこと(さらには使わないこと)を考える方がずっと大事なのです。この図でも、リデュース、減らすことが上部になっていますね。使う量が減れば、リサイクルする量も減ります。そして、それが海ごみー海に浮かぶプラスチックごみを減らすための最重要な取り組みであると言えます。

さらに、もう一つ興味深いデータがあります。世界と日本国内のプラスチック生産量とその用途別のグラフです。

 

マイクロプラスチックの海洋分布

グラフを比べてみると、世界に比べて日本国内で生産されているプラスチックは、使い捨てが想定されるプラスチックの用途がかなり多いことが分かります。これは、過剰なプラスチック包装が多いことや、依然として無料のレジ袋が多いなど、容器包装等の部分でプラスチックの使用を減らす取り組みが世界に比べ進んでいないことを示しています。逆に言えば、日本国内で使い捨てプラスチックを減らす取り組みを進めることが、日本でのプラスチックごみ問題に対して効果的であると言えるでしょう。

日々の生活の中で、プラスチックを減らすことは誰にでもできます。例えば、買い物にはマイバックを持っていくかリュックなど持っていきレジ袋を断る、ペットボトルを買うのではなくマイボトルを持ち歩く。あなたにもできることはあります。プラスチックごみ、その先につながる海ごみの問題は、すべての人が当事者です。抜本的な対策ももちろん大事ですし、一人ひとりの行動や意識もとても大事なのです。

次回からは、日本よりプラスチックを減らす取り組みが進んでいる海外の様子を取り上げていきます。

 

参考資料・画像出典
環境省 プラスチックを取り巻く国内外の状況
UNEP report-on-single-use-plastic
WWF 海洋プラスチック問題について
NHK クローズアップ現代 ペットボトルごみがついに限界!? ~世界に広がる“中国ショック”~
トップ画像 Dutch Eredivisie”PSV Eindhoven v Ajax Amsterdam”, getty image
2枚目画像 Heads Of State Attend G7 Summit – Day One, getty image

イベント詳細

イベント名リサイクルよりも大切なこと
\ 記事をシェアしよう /
X LINE ニュースを共有

関連リンク

誰でも海ごみ清掃できる「拾い箱」がファミマ3店舗に設置
レポート
2024.11.15

誰でも海ごみ清掃できる「拾い箱」がファミマ3店舗に設置

この真実を知るとポーポー焼きが10倍美味しい!
レポート
2024.11.10

この真実を知るとポーポー焼きが10倍美味しい!

ページ内トップへ