みなさんこんにちは、海と日本プロジェクト in ふくしま事務局レポーターの森亮太です。
美しい海を未来に残すためには、海洋汚染のことをちゃんと知って、私たち一人ひとりに何ができるかを考え、行動していく必要があります。海ごみレポートは今回が第7回。海ごみの中でも特に問題なのは、一度海洋に放出されると半永久的に残り続けるプラスチックごみです。2050年には、魚の量と同じくらいのプラスチックごみが海に漂うというショッキングな予測もされています。世界中で削減の動きが進むプラスチック。その中でも、使い捨てのプラスチックは世界各国で規制の動きが進んでいます。
海ごみレポート 第7回
使い捨てプラスチック規制が進む海外の取り組み
前回のレポートでは、プラスチックごみを減らすためにはそもそものプラスチックの使用を減らすことや使わないことが大事であるとお伝えしました。特にプラスチックの生産のうち、容器・包装など使い捨てが想定されるものは全体の3分の1を占めており、使い捨てプラスチックを規制していく取り組みが世界各国でなされています。
使い捨てプラスチックと聞いて、どのようなものを想像しますか。真っ先に思いつくものとしてビニール袋が挙げられます。ビニール袋は、使い捨てプラスチックの中でも最も規制の動きが活発になっており、海外45カ国以上ではすでにビニール袋の使用禁止が議会承認・決定されています。環境意識が高いヨーロッパ諸国だけではなく、アフリカ、中国やインドまでもが禁止を決めているのです。一方で、一人当たりのプラスチックごみ排出量が1位であるアメリカ、2位である日本は対応が進んでおりません。
ビニール袋の規制状況。青色と紫色に塗られた国がビニール袋の禁止を示している
さらに、使い捨てプラスチック削減の取り組みが進んでいる地域として、EU(欧州連合)が挙げられます。欧州委員会は2018年5月28日、大量に蓄積した有害な海洋プラスチックごみ削減に向けて、EU全域に渡る新しい規制を提案しました。欧州の海岸や海に多く見られる、使い捨てプラスチック10品目だけでなく漁具も対象としており、海ごみを減らすに当たり包括的で有効な規制内容案になっています。
その後、EU(欧州連合)の下院に当たる欧州議会では、2018年10月24日に、代替可能な使い捨てプラスチック、例えばストロー、食器、綿棒、マドラー等の使用を2021年から禁止する法案を可決。また主要なプラスチックごみである、たばこのフィルターについても2030年までに8割削減するとしています。
使い捨てプラスチック10品目と漁具を対象とした規制内容案
この規制案の中で、EPRという普段聞きなれない言葉が出ていると思います。EPRとは「Extended Producer Responsibility」の略であり、「拡大された生産者責任」と日本語訳できます。これは、製造者に製品開発からリサイクル、最終処分に至るまで責任を課すことによって、製品によって生じる総合的な環境負荷の低減を目指す戦略です。簡単に言えば、生産者は製品を作って終わりではなく、最終的に処分されるまで費用負担まで考えなくてはならない、ということなのです。
1991年、世界で初めてEPR が具体化されたドイツでは、容器・包装の減量化、不要な容器・包装の削減、再充填可能容器の使用、紙容器等の経済的にリサイクル可能な材料への移行も進みました。1991年から1995年までの4年間で、容器・包装使用量は国民一人当り重量で14%も削減されたという有効性も示されています。
また、そのドイツではペットボトルのデポジットも進んでいます。デポジットというと、日本でもビール瓶などに導入されていますよね。それと同じで、売店やスーパーなどで販売されているペットボトルには、商品の代金に0.25€(35円ほど)が含まれています。そして中身を飲み終わった後にスーパーに設置されている回収機に戻すと、0.25€が戻ってくるのです。このデポジット制度によって使い捨てペットボトルの高い回収率につながっています。ポイ捨てされたとしても、お金になるので誰かが回収し、捨てられたごみも減ります。
ここまで、世界における使い捨てプラスチックの規制状況についてお伝えしてきました。ビニール袋の禁止(有料化)、EPRという生産者が処分のコストを負担する仕組みやデポジットという消費者が負担する仕組みを具体的に紹介しました。共通するのは、プラスチックを作る側や使う側にある程度の負担を強いることで、使わない、ないしは使う量を減らす方向を目指していることです。
日本ではほとんどまだ導入されていないことも多いですが、これから日本にも使い捨てプラスチック規制の波が来るはずです。プラスチックの使用量削減は喫緊の課題です。特に一人当たりのプラスチックごみの発生量が世界2位の我が国での取り組みは非常に大切です。規制される前でも、一人ひとりの行動で使用量を減らしていくことはできるはず。これを読んだ今から、少しづつ生活習慣を変えてみましょう。
次回は、日本国内における使い捨てプラスチック規制や取り組みの状況をお伝えします。
参考資料・画像出典
環境省 プラスチックを取り巻く国内外の状況
UNEP report-on-single-use-plastic
WWF 海洋プラスチック問題について
経済産業省 拡大生産者責任( EPR)をめぐる議論と現状
トップ画像 Single-use plastic protest in Jakarta, getty image
イベント名 | 使い捨てプラスチック規制が進む海外の取り組み |