みなさんこんにちは。海と日本プロジェクト、専任事務局員の小松です。
普段、いわき市の南にある港町に住んでいることもあり、同じ福島県浜通りに位置しているというのに、北にある双葉郡内の海に、すこし距離を感じていた私ですが、双葉郡楢葉町の方にご案内いただき、楢葉町の沿岸を「まちあるき」する機会に恵まれましたので、その模様をレポートしたいと思います。
楢葉町は、いわき市の北、双葉郡にある自治体です。沿岸部には東京電力広野火力発電所と、福島第二原子力発電所があることから、エネルギーの供給地としても知られています。2011年の東日本大震災では甚大な被害を受け、現在も復興の途上にある、そんな自治体です。
今回のツアーは、その楢葉町の南部にある「岩沢海水浴場」からスタートしました。広野火力発電所が目の前にあり、発電所の巨大な建屋が印象的な海岸です。砂浜の大きさも程よく、少しアットホームな感じといえばいいのでしょうか。ちょうどいいサイズ感で、訪れた日も、サーファーたちが気持ちよさそうに波を楽しんでいました
この地域には発電所が点在しています。私の住んでいるいわき市にも、火力発電所が間近に見える海岸がありますが、やはりこの土地とエネルギー産業との関わりについて考えずにいられません。
岩沢海水浴場の次に向かうのは、楢葉町の中心部を流れる井出川の沿岸部です。じつは、この井出川の火口付近から沿岸を歩き、そのまま福島第二原子力発電所のある波倉海岸まで踏破できるそう。
ガイドの方に連れられ、岩盤が剥き出しになっている海沿いの道を30分ほど北上していきます。このあたりは砂浜はあまりなく、岸壁がそのまま海に面しています。岩肌に直接波がぶつかるため、歩くと、ドーン、ドーンと波の振動が伝わってきます。
また、途中、その岸壁のさらに高いところから沢の水が落ちてきているところもいくつかあり、この地の水資源の豊かさも感じられました。頭上の崖の上では農業が営まれており、その用水路を流れる水が、そのままこの崖から海に流れ込んでいるわけです。
私たちが通ってきた道は、車は入ってくることができないため、自分たちで歩かなければいけないのですが、こうして海沿いを歩き、見た風景について語り合って歩くのもいいものですね。
目の前に広がっているのは同じ景色ですが、それを受け取る人たちの感じ方は様々。そうして捉え方の違いや、解釈の違いを受け止めながら歩くと、目の前の風景も単純なものには思えず、とても興味深いものとして目に飛び込んできます。
砂浜がさほど多くない、崖の地形では、なかなか大きな漁港をつくることも難しいでしょうし、塩害などもありますので、大規模な農業も難しい。それでもなお楢葉の皆さんは、土地をさまざまに有効活用しながら、産業を作って生活してきたのだということを窺い知ることができました。
歩き始めて30分、40分ほどでしょうか、視界が急に開かれて、目の前に福島第二原子力発電所が飛び込んできました。原子力発電所は、レキュリティーの問題で、通常は中に入ることができませんし、近くに寄ることも難しい場所です。ですがこうして、海側に出てみると、全貌を確認することができます。
改めて、東日本大震災の被害の大きさを感じるとともに、原子力災害が地域にもたらしたものについて考えることを促されます。なぜこの地域に発電所が? なぜこの場所に? この高さに? と色々な疑問が湧いていきます。
車では見えない景色。歩くスピードだからこそ起動する想像力。ぜひ皆さんも、海沿いを歩いてみてください。車では入れないところに、意外な道が伸びていたり、想像もしなかった景色を楽しんだりと、新しい発見があるはずです。
専任事務局員・小松
イベント名 | 楢葉町・浜歩き |
場所 | 井出川河口〜波倉海岸まで |