ワクワクが止まらない魚屋へ潜入！ | 海と日本PROJECT in ふくしま

みなさんは「常磐もの」という言葉を耳にしたことはありますか？

福島県沖は「潮目の海」と呼ばれる黒潮と親潮がぶつかる海があり、そこで水揚げされた魚介類や水産加工品を総称しています。その質のよさは、日本最大級である豊洲市場のプロたちが「常磐ものはうまい！」と太鼓判を押すほど。

そんな質の高さを誇る魚介類ですが、東日本大震災による漁獲量の減少、福島第一原発の処理水放出など逆風が絶えません。

そんな地元の漁業界を盛り上げようと奮闘しているのが「おのざき」なのです。

1923年に創業した老舗鮮魚店。2023年に創業100年を迎えたのを機に、今年4月26日に東北最大規模の売り場面積を誇る「おのざき平総本店」がリニューアルオープンしました。公式webサイトを見ると「体験型鮮魚店」という気になる文字が。魚屋さんで体験ができるとは、一体どういうことなのかまったく想像がつかないまま店を訪ねました。

広々とした店内は、波のイラストに売り場が書かれた垂れ幕がかかり洗練されています。早速目に入ったのが「鮮魚・活魚」売り場。新鮮な魚介類がずらりと並び、見ているだけでワクワクが止まりません！　特にいちばん目立っていたのが「常磐もの」コーナー。今回の改装で最も力を入れた売り場だそうで、この日はメヒカリ、イワシ、ホウボウ、ヒラメなどの旬の魚介類が集まっていました。日頃近所のスーパーで常磐ものが並んでいるのを目にしていましたが、これだけの種類が勢ぞろいしているのは初めてのことで驚きました。

ここで魚を手に取っているお客さんに、品出しをしていた店員さんが干物の作り方を教えている会話が聞こえてきました。接客にも力を入れるおのざきさんでは、対面販売を強化しており、魚のプロから直接調理方法や魚の食べ方が聞けるようです。オンラインショッピングで買い物をすることが増えた今の時代だからこそ、ただ魚を並べて販売するのではなく、一歩踏み入った接客スタイルに心惹かれました。

次は「日配」コーナーへ。ここでは、おのざきのオリジナル商品や地元のものを中心とした水産加工品が揃っています。カレイの煮付けやカキのグラタンなどの調理食品も豊富で、料理が苦手な人や忙しい人でも手軽に魚を楽しめます。この売り場で気になったのが、おすすめ商品につけられたポップ。商品のイチオシポイントや魅力、生産者の声などが書かれています。ひとつひとつ工夫されたポップを読んでいるうちに、すっかりその商品の虜になった私は、気づけばポップが書かれた商品ばかりカゴに入れていました。ほかにも、魚のアラを使った新感覚のジュレや魚を使ったスパイスカレー缶詰、魚の離乳食など個性的なオリジナル商品の数々に魅了され、魚がこんなに可能性を秘めた食材だったのかと、どんどん魚の魅力にハマっていきます。

店内をふらふらしていると、突然「ただいまから、火山を行います～」とアナウンスが聞こえてきました。「なんだそれは？！」と思っていると、ガラス張りの焼き場で藁を使って火が焚かれ、網を使って生のカツオを焼き始めました。これは、いわき市平伝統の「カツオの火山」と呼ばれており、今回のリニューアルで新設されました。ガラス越しでも熱気を感じるほど勢いよく火が燃え上がり、カツオがあっという間に焼かれていきます。焼きあがったカツオは一度冷水でしめて、店頭に陳列されます。その様子を子供から大人まで立ち止まって夢中になって見入っていました。このほかに不定期でまぐろの解体ショーも行っており、魚屋ならではの楽しい仕掛けが盛りだくさんです。

先ほどのカツオを購入した私は、帰宅後いわき流でニンニク醤油につけて食べてみました。藁で焼いた香ばしさが口のなかいっぱいに広がり、あまりのおいしさに驚愕！　新鮮でおいしい魚を届けるだけでなく、見ても食べても楽しめる新しいスタイルの魚屋に、まるで魚のテーマパークに来たかのような高揚感でいっぱいの気持ちになりました。

みなさんもぜひ、常磐ものを買いに体験型魚屋に足を運んでみてください。