みなさんこんにちは! 海と日本プロジェクトinふくしまレポーターの前野です。先日「匠の技術を、次世代につなぐ。」という記事で、坂本つり具店の店主・坂本政男さんをご紹介しました。この釣り具屋の中で坂本さんにお話を伺っていると、釣り人はもちろん、警察官やまちづくりに携わる人、漁師、住民の方などさまざまな方に遭遇します。小さな港町にある釣り具屋に、なぜ色々な人が集まってくるのか? 今回は、釣り具屋の魅力をお伝えします。
坂本つり具店に入ってまず目に飛び込んでくるのが、たくさんの「釣り具」です。釣り具屋なんだから「釣り具」があって当然と思った方もいるかもしれませんが、釣り人のみなさんの反応をみていると、この釣り具、何やらただの釣り具ではないと気付かされます。
「これがここで手に入るとは…」とつぶやきながら、みなさんが手に取るのはカラフルなルアー。どれも他の店にはなかなか置いていないものだといいます。ある方が、坂本さんに「なぜこんなにニッチな商品を取り揃えているのか」と質問をすると、坂本さんからは「自分もあったら嬉しいから」という返答が返ってきていました。
そう、釣り具屋を経営する坂本さん自身が大の釣り好きだったんです! 自分が使っていた釣り具をお店に並べていった結果、今のラインナップが誕生し、お客さんにも評判になったのだそうです。
次に飛び込んできたのは「漁具」。ある時は、いわき市から70km離れた、福島県浪江町からこの漁具を買いに来ていた漁師の方も見かけました。さきほどのカラフルな釣り具と同様で、この漁具も普段の漁で坂本さんが使うものです。
釣り具屋を経営する傍ら、漁に出かける坂本さんは、震災をきっかけに漁師の活動をスタートさせました。誰かが買わなくても、自分が使う。釣り具や漁具など、かゆい所に手が届いた商品の品揃えには、釣り好き由来の気配りが現れていました。
釣具店でおしゃべりをしていると、住民の方もやってきます。目当ては「釣り具」ではありません。みなさん、坂本さんへの相談ごとやお願いごとをもってくるのです。
折戸出身の坂本さんは、区長を勤めるだけでなく、防犯協会、民生委員、少年補導、まちづくり協議会、NPO理事、まちの文化を伝承する担い手・・・などなど、10以上の団体に長年所属し、地域活動を続けています。
釣り人にとっては「釣り具専門店」、住民にとっては「よろず相談所」として機能する坂本釣り具店。まちを知り尽くした坂本さんが運営しているからこそ、多様な人にとって開かれた場所、居場所になっているのかもしれない。そんなことを感じました。
「俺が好きではじめた釣り具屋だし、子どもや孫にはお店を継がせる気はないんだ。」と坂本さんは話します。折戸や中之作をはじめ、港町の歴史と坂本さんの人生が詰まった坂本つり具店は、このまちのシンボルともいえるのではないでしょうか。
個人店の事業承継は、もちろんオーナーや家族の意思が優先されますが、こうしたシンボルをまちでどのように受け継いでいけるのかという勝手な思考を巡らせながら、今後も坂本釣り具店に関わっていきたいと思います。
海と日本プロジェクトinふくしまレポーター:前野
イベント名 | 坂本つり具店 |
場所 | 福島県いわき市折戸岸浦68-1 |