レポート
2018.08.09

筑波大生現地調査レポ2 漁師町を支えるば

 

今年、海と日本プロジェクト in ふくしまでは、福島の海の復興の現状や風評被害について現地調査を行う、筑波大学社会学類・五十嵐泰正ゼミとコラボ。学生目線で、そのリサーチ結果や感想をレポートしてもらう連載企画をスタートします。初めて福島の海を訪れる学生たち。福島の海は、彼らの目にどのように映るのか。これからの「海づくり」の参考にすべく、長期的に連載していきます。

 

筑波大生現地調査レポ vol.2 

漁師町を支えるば

こんにちは!筑波大学社会学類2年の神林実花です。今回は、いわき市小名浜で開催されている食のイベント「さかなのば」について紹介します。「さかなのば」は小名浜の鮮魚店、「さんけい魚店」で月に1回ほど開催されており、店中には地元で獲れた魚の刺身がずらりと並んでいます。他にも惣菜や干物などを、地元のお酒と共に楽しめるイベントです。

お店につくと、店の外に人があふれるほどに賑わっていて、みなさん地物のお酒を片手に楽しく話しながら魚をつまんでいました。ちょうちんの柔らかい光と共に、古き良き漁師町の雰囲気がとても素敵でした。

たくさん並ぶお刺身とお惣菜の中から、私は、ほんまぐろ,真鯛,かつおをいただきました。実際に見て、自分で選ぶことのできる楽しさもありました。ほんまぐろはとろけるようなおいしさ、真鯛は脂がのっていてとてもおいしかったです。いわきを代表する魚であるかつおは、分厚く普段自分が食べているものとは段違いのおいしさでした。

いわきの新鮮な魚を楽しんだところで、今回はイベントに来ている方々に、いわきの魚やこのイベントについてインタビューをしました。まず、さんけい魚店の常連兼、地元で建設業を営むSさんです。イベントに参加するのは初めてだということですが、イベントについて、「田舎町だけど良いイベント。若い人にどんどんやってほしい。」と嬉しそうに語っていました。

震災後、風評被害などで福島の魚が売れず、休業手当で生活している人も多く、町に活気がないと言います。漁業で成り立っていた町が、生活に密着し、幼い頃から中心であったものを失うことは、地元の方にとってとても寂しいことであると思います。しかし、その和を繋ぐのはやはり港町の拠り所である漁業であり、このイベントは開始1年半で、早くも地元の人の支えになっていると感じました。

続いて、メディア関係の仕事をされているいわき出身のOさんです。現在は県外に住んでおり、お子さん2人とイベントに参加していらっしゃいました。以前からこのイベントについては知っており、今回はリサーチ取材の一環でいらっしゃったそうです。とてもたくさんのお魚を召し上がっていて、メヒカリという魚をお子さんたちが気に入って3皿もおかわりしたそうです。Оさんは地元の魚のPRに関して、今後の実践的な面で話してくださいました。

県外に住んでいるОさんは普段スーパーで魚を買うけれど、同じ値段でいわきと同じ質の良いものは買えないと言います。しかし、地元の人は美味しいものを食べている感覚がなく、上手なブランディングがあまりできていないと言います。地元の魚だけを食べていたら、その良さを日常では感じにくいのかもしれません。県外に出た方ならではの意見であると感じました。そしてブランディングについてОさんは、おいしい根拠やその商品のうんちくを出すなどやれることはたくさんと言っていました。このような県外に住んでいる方からの意見も、観光資源を増やすためにとても重要であると感じました。

 

美味しいさかなとお酒を片手に、想いが語られる

  1. 賑わっている「さんけい魚店」の店内    
  2. 地元への愛と本音も語ってくださいました
  3. いわきの良いところをたくさん語ってくださいました

 

最後に、県外の大学を卒業後、いわきに戻って仕事をしているKさんです。Kさんは、地元への愛とともに本音も語ってくださいました。

Kさんは、「地元の魚はめちゃくちゃ好きだけれど、放射線の影響があるのは否めない。」と最初にはっきりと言っていました。いわきの魚もお酒も好きだけれど、外食にもまだ不安があるそうです。しかし、このイベントについて、「いわきを愛する人たちが集まる最高のイベント!」と語っていました。そこには、生活の中での不安と、地元を愛する心との葛藤があるように見えました。

また、放射線についての報道や媒体の何を信じたら良いのか、国の基準値の100ベクレルが高いのか低いのかもわからないと言います。このような意見を過剰だと考える人もいるかもしれませんが、本音であるとも言えます。

県外から来て、観光客として魚を食べるのと、日常生活の中で食べるのとでは不安の大きさが違います。不安を抱え、放射線のことを生活の中で意識して過ごすことは、想像し難いほど苦しいことなのではないでしょうか。それぞれが納得する形で、何を信じるべきなのかを自分で決めなければなりません。

さらに、友人に福島県産のものを送ることにもためらいがあり、食べて応援も自信が持てないと言います。福島県産のブランディングも必要ですが、別問題として、福島の方も含め、福島の食品を不安に思ってしまう気持ちとどう向き合っていくか考えなければならないと感じました。

地元の方々のなかには、私たちが想像できない思いをもって生活している方もいらっしゃいます。先ほどまでに賑わっていた店内も、提灯の明かりが切なく見えたと同時に強い光に感じました。

 

イベント詳細

イベント名筑波大学・五十嵐泰正ゼミによる現地調査
日程2018年7月22日(日)
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