今年、海と日本プロジェクト in ふくしまでは、福島の海の復興の現状や風評被害について現地調査を行う、筑波大学社会学類・五十嵐泰正ゼミとコラボ。学生目線で、そのリサーチ結果や感想をレポートしてもらう連載企画をスタートします。初めて福島の海を訪れる学生たち。福島の海は、彼らの目にどのように映るのか。これからの「海づくり」の参考にすべく、長期的に連載していきます。
筑波大生現地調査レポ vol.6
防潮堤をどう生かすか
みなさんこんにちは! 筑波大学社会・国際学群社会学類3年の菅野です。私たちは先日、ゼミ合宿の一環でいわき市の薄磯地区、薄磯海水浴場を訪れ、この海と日本プロジェクトinふくしまの専任事務局員である小松さんからさまざまなお話を伺ってきました。今回はこれらのお話を聞いて感じ、考えたことを率直に書いていきたいと思います。
この薄磯地区を訪れたのは、ゼミ合宿の初日、私がいわきに行って初めての行程ということもあり、久しぶりに間近で見る海に少し興奮していました。塩屋岬に立つ灯台と海のコントラストが美しく、また、薄磯海岸の砂は、さらさらと白くてとてもきれいでした。いい海水浴場だなぁと素直に感じました。
しかしながら一方で、訪れたのは七月下旬の土曜日、私のイメージではその時期海水浴場はかきいれ時である気がしていたので少し閑散としているような印象を受けました。
事実として、震災以前と比較すると観光客は75%ほどしか戻ってきていないそうです。小松さんのお話を聞きながら、こんなに魅力的なところなのにもったいない、どうすれば薄磯海水浴場を訪れる人が増えるのだろうと考えていました。
小松さんのお話を聞く中で一番印象的であったのは、防潮堤についてです。薄磯地区は震災以前、海岸線とほぼ同じ高さで住宅や店舗が並ぶ、いわば海とともに生きる街であったそうです。
しかし震災後、海岸線と道路の間に高さ10メートルの防災緑地が建設され、新たな街づくりが進められることになりました。実際、砂浜にそびえたつ高い防潮堤からは街は全く見えず、新たな住宅地からは海が見えない、海と街とが分離しているように感じられました。
地元の人の声として、海が見えなくなるのは寂しいというのは確かにある、誰のための防潮堤かということを考えてみよう、とのお話が強く心に残りました。
しかし、防潮堤がなければいいのかと問われると、私はそうではないと思います。実際に大きな津波が押し寄せ、たくさんの被害を受けた場所です。これから安心して暮らしていく中で防潮堤はやはり切り離すことはできないと思いました。
ただ、今まで当たり前のように海と共にあることが、薄磯地区の魅力であったこと、そして、地元の人の海が見えなくなったことを寂しく思う気持ちを置きざりにしていたら、この先、住人も観光客も減少していく一方になってしまう気もしました。
では、もし防潮堤が切り離すことができないものであるならば、逆に防潮堤を魅力的な街づくりの中心においてみてはどうでしょうか。
整備している防災緑地の機能には、海洋レクリエーションや自然とのふれあいの場としての活用や、景観の再生などもあると知りました。例えば高い防潮提を海の見える本格的ボルダリング施設にしてみたり、緑地が成長したらちょっとしたアスレチックを作ってみたり、いろんな活用方法があると思います。
海と街の間にある防潮堤をどう生かしていくか、生かし方次第で、海水浴場はまた活気をとり戻していけるのではないかと、小松さんからのお話を聞きながらそう考えました。
まだまだ未熟な一大学生の意見でしたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。今回のゼミ合宿ではこの薄磯海岸をはじめ、いわきの魅力にたくさん触れ、得るものが多くありました。この出会いを無駄にしないよう、ぜひまたいわきを訪れ、学んでいきたいなと思います。
イベント名 | 筑波大学社会学類・いわきでの調査実習 |
参加人数 | 2018年7月21日 |