今年、海と日本プロジェクト in ふくしまでは、福島の海の復興の現状や風評被害について現地調査を行う、筑波大学社会学類・五十嵐泰正ゼミとコラボ。学生目線で、そのリサーチ結果や感想をレポートしてもらう連載企画をスタートします。初めて福島の海を訪れる学生たち。福島の海は、彼らの目にどのように映るのか。これからの「海づくり」の参考にすべく、長期的に連載していきます。
筑波大生現地調査レポ vol.8
7年経った小名浜の日常 にぎわい戻る日曜日の午後
こんにちは! 筑波大学の社会学類3年、高橋智貴です。7月22日、日曜日の午後にいわき市の小名浜港周 辺を訪れた様子をレポートしたいと思います。
アクアマリンふくしまの東側、シーフロント・プロムナードのあたりを散策していると、道から高さ の違う筒のようなものがいくつも生えている場所がありました。気になったので近寄って耳を済ませる と「チャポン」「トプン」という音が聞こえます。 これは床下の海の音を埋め込まれたホーンで集音し、上にある筒からそれを伝える「Umi-Tsukushi」 という装置だそうです。
高さが違うそれぞれのUmi-Tsukushiは地面下のホーンの高さも異なり、一つ一 つから違った音が聞こえます。夜になると波の音と床に埋め込まれた照明が同調するということで、波 の音を聞きながら幻想的な世界に浸れそうです。 その奥に見える金網も、「Wave Wave Wave」という波の音を体験するものだとか。柔らかく波打つ 金網の下からは力強い波の音が聞こえ、日差しが強く暑い日だったのですが少し涼しさを感じることが できました。
Umi-Tsukushiを抜けそのままアクアマリンの西側に歩を進めると、たくさんの釣り人の姿が目に入っ てきました。中には親子3代で釣りを楽しむような方々も。 そのなかでたくさんサバを釣っているご夫婦が。お話を聞くと、午前中アクアマリンで行われた「調べ ラボ」にもお越しくださったご夫婦でした。ご主人の浜野勝さんはマコガレイを中心に釣りを楽しむ、 自称「釣りバカ」。今回は奥様のサバ釣りの付き添いでいらしたということでした。
浜野さんが狙うマコガレイのシーズンは2月から4月と9月から11月までとのこと。一番釣れるのは、卵を放して餌を探し回る2月から3月だそうです。シーズンには浜野さんは1日に2〜3枚、調子がいい時には10枚位釣ることもあるそうです。 とにかく小名浜はマコガレイが釣りやすい場所だそう。
コツを尋ねると「俺なりに仕掛けを工夫したり 、場所とか、時間とかを一番釣れる場所に決めて釣る。足繁く通わないとわからないよ」と笑顔で答えてくれました。 目指すは日本記録のマコガレイ。2000年に釣り上げられた61.3cm*を超える大物を狙います。
「その前 の日本記録は、この辺の工事をしている周辺で上がった57cm。去年も同じようなところで59センチのマコガレイが上がってるから、ここで全く可能性がないわけじゃないんだよね。そろそろそれ(日本記録)を超えるやつがこの辺から出てもいいと俺は思ってるんだけどね」と浜野さん。小名浜から日本記録のマコガレイが釣れる日もそう遠くないかも知れません。
さらにアクアマリン周辺を一周すると目に飛び込んでくるのは、今年の6月18日にオープンしたばかり のイオンモールいわき小名浜。このイオンモールいわき小名浜は、福島県初のイオンモールだそうです 。日曜日ということもあり、駐車場はほぼ満車。店内も家族連れや若者、お年寄りなど多くの方が思い 思いに買い物を楽しんでいました。
このイオンは1階部分が駐車場、2階以上がテナントという構造。2階部分はペデストリアンデッキでみ なと公園とつながるようになっています。 ふと気づいたのが様々なところにある「津波警報等が発令された際は屋上駐車場までのぼってください」という表示。実はこのイオンは「ぼうさいモール」として地域の防災の拠点になるような設計をし 、停電や浸水対策、飲料水・電源の提供もできる施設だそう。
確かに一階部分が駐車場なら、津波が来た際も被害を最小限にくい止められます。 また2階がペデストリアンデッキで外とつながっているのは、災害時の避難通路としての機能があることが理由なのでしょう。震災という経験を活かし、よく考えられた施設づくりをしているのだなと感心 してしまいました。
ここ小名浜港周辺も津波の被害があったそうです。イオンに集うたくさんの人や、思い思いに釣りを楽しむ方々の姿を見ると、その事実を忘れてしまいそうになりました。震災から7年。その被害を感じ させることのないくらいに人々が集い、にぎわいが戻っている小名浜、日曜日の午後でした。
イベント名 | 筑波大学社会学類・いわきでの調査実習 |
日程 | 2018年7月22日 |