今年、海と日本プロジェクト in ふくしまでは、福島の海の復興の現状や風評被害について現地調査を行う、筑波大学社会学類・五十嵐泰正ゼミとコラボ。学生目線で、そのリサーチ結果や感想をレポートしてもらう連載企画をスタートします。初めて福島の海を訪れる学生たち。福島の海は、彼らの目にどのように映るのか。これからの「海づくり」の参考にすべく、長期的に連載していきます。
筑波大生現地調査レポ vol.12
ウロコジュウの挑戦は続く
こんにちは。筑波大学の社会学類の八木です。
7月23日の夜、いわき市の「さかなや食堂ウロコジュウ」に訪れ、店主の金成勝弘さん(以下、勝弘さん)にインタビューをさせていただいた。「ウロコジュウ」は、いわきら・らミュウにもウニの貝焼きや干物を扱った店を構えているが、食堂を中心として話を進めていきたい。
「さかなや食堂ウロコジュウ」ができるまでのプロセス
店主である勝弘さんの父親が家業でかまぼこを作っていたが、東日本大震災によって工場が全壊した。元々家業を継ぐつもりだった勝弘さんは、かまぼこ工場の再建に掛かる設備投資の費用をきらい、同じ水産業者である漁業関連の仕事を始めた。それが、いわきら・らミュウにあるウロコジュウである。
しかし、ウニの貝焼きや干物などの水産物を扱った商売は利用客によるリピート率に悩んだため、「さかなや食堂ウロコジュウ」を開店した。もちろん、利益ばかりを優先した開店ではなく、福島の復興キャンペーンで都内のイベントに行くたびに、もらってばかりの形が嫌だった。何か返せるものはないかと考えたときに、おいしいものを食べる感動を提供したいと感じたと、勝弘さんは語る。
「さかなや食堂ウロコジュウ」のコンセプト
コンセプトは圧倒的な鮮度パフォーマンスそしてコストパフォーマンスである。仕入れ先は地元小名浜や茨城の漁港からで、勝弘さんが元々商社で働いていたツテを活用している。もうひとつ大切にしていることは、人と人の関係、つまりコミュニケーションだ。お昼時には200人をこえるお客さんが来店し、毎週末都内から来てくださるお客さんも多い。「そんないわきを訪れる人たちにとっての玄関口になりたい。」と勝弘さんは語る。
風評被害について
福島第一原発事故の風評被害について聞いてみた。勝弘さんは「放射線とか気にするくらいなら食べなければいい。」とおっしゃった。鮮度パフォーマンスそしてコストパフォーマンスでそれらを乗り越え、小名浜の魚に対してプライドを持って提供したいという。
今後の展望
食堂の次は、より深くお客さんとコミュニケーションを取りながら魚を提供できるお店を構えたいという。カウンターしかなく、自分が本当にいいと思った魚をこの人に食べさせたいと思って食べさせたい。極端な例として「さかなや食堂ウロコジュウ」の常連さんに、「今日、いい○○入ったから食べにおいでよ。」と言えるようなお店になりたいと説明してくれた。もはや、趣味ともいえると述べていた。
すごく楽しそうに「やりがい」をしっかりもって仕事をしている勝弘さんを見て、今後の「ウロコジュウ」(勝弘さん)の挑戦を私も見てみたいと思った。今後も一期一会ならぬ一魚一会を大切にしながら、江戸前ブランドならぬ小名浜ブランドの確立を期待したい。
イベント名 | 筑波大学社会学類・いわきでの調査実習 |
日程 | 2018年7月23日 |