レポート
2018.10.01

筑波大生現地調査レポ18 漁師町の食文化を伝えるば

 

今年、海と日本プロジェクト in ふくしまでは、福島の海の復興の現状や風評被害について現地調査を行う、筑波大学社会学類・五十嵐泰正ゼミとコラボ。学生目線で、そのリサーチ結果や感想をレポートしてもらう連載企画をスタートします。初めて福島の海を訪れる学生たち。福島の海は、彼らの目にどのように映るのか。これからの「海づくり」の参考にすべく、長期的に連載していきます。

 

 

筑波大生現地調査レポ vol.18

漁師町の食文化を伝えるば

みなさん、こんにちは。筑波大学社会学類の飯田です。7月22日、日曜日の夜にいわき市のさんけい魚店で開催された「さかなのば」を訪れ、さんけい魚店店主の松田義勝さんと、娘さんで「さかなのば」の立ち上げ人の一人である松田幸子さんにインタビューした様子をレポートします。

 

地元の魚を、楽しい場所で。

  1. 店長の義勝さん
  2. 運営者の松田幸子さん
  3. 地魚やお惣菜

 

「さかなのば」とは

月に一度日曜日の夕方から夜にかけて、普段は町の魚屋さんであるさんけい魚店の店頭が、地魚とお酒を一緒に味わえる居酒屋さんへと変身する。この企画は2016年12月から続けられており、毎回たくさんのお客さんが集まる大人気イベントとなっている。

市場が閉まる日曜日は、商品が入ってこないため店を閉めてしまうそうだ。そのためさんけい魚店がある商店街も人通りが少なくなる。このような状況を変えてもっとたくさんの人が集まり、交流する場を作りたいという願いが「さかなのば」を始めた理由だと、運営者の松田幸子さんは言う。

 

「さかなのば」のこだわり

「さかなのば」では、二つのこだわりがある。一つは地元の魚を提供することだ。

地魚の魅力を、福島県外の人など地元以外の人たちまで届けたいという強い思いがある。そのためにまず地元の人に地魚を知ってもらいたいと考え、「さかなのば」を地元のさかな文化の発信地にしたいと松田幸子さんは言う。「さかなのば」では、地魚だけではなく、地元の食文化も伝えるために「さんまのポーポー焼き」「にいなます」といった珍しいさかな料理を提供している。

新鮮な地元のさかなを刺身にしてそのまま出すだけではなく、いわき市で古くから食べられてきた郷土料理や、漁師が船の上で漁の合間に食べていた船方料理などの、地元の人でも知らなかったり作り方がわからなかったりする様々なさかなの食べ方をおしえてくれている。海に近い港町に住むいわきの人たちも、「さかなのば」でさかなの新しい魅力に気付かされる人が多いのではないだろうか。

 

二つ目のこだわりは、楽しい場所にすることだ。

近い距離間で椅子が配置され、隣に座ったお客さんの肩が少し当たるくらいの場をつくることで、お客さんが楽しい時間を過ごせるように工夫されている。この距離感が活気のある雰囲気を作り出しているのではないだろうか。

私が「さかなの場」を訪れて最初に感じたことは、お客さん同士、お客さんとお店の人の距離が近く楽しそうにお酒を飲んで、魚を食べて、話に花を咲かせている光景だった。

父でありさんけい魚店の店主である義勝さんは、娘の松田幸子さんから「さかなのば」を始めたいと相談を受けた時に、「楽しむというモットー」を持つようにという条件をだしたそう。何事も楽しくなくては続かないのだから楽しく続けてほしいというのが父義勝さんの思いである。

 

いわきの漁師町に伝わる魚食文化を様々な人に伝えたい

  1. にいなます
  2. マグロの刺身
  3. 賑わう店内

 

料理の紹介「にいなます」

「にいなます」は、古くから船の上で漁師に食べられてきた船方料理で、細かく切ったかつおとそぼろ、大根などを醤油で味付けして和えたものである。この料理は、小名浜に住んでいる人たちも知らないだろうと店主の義勝さんは言う。義勝さんは、お父さんがこの料理を作っているのを見て受け継いだ。

受け継ぐだけでなく、もともとはかつおの余っていた部位を使っていたが、ハラスと呼ばれる油がのっている身を使うことでより美味しい「にいなます」を作り上げた。「さかなのば」では、試行錯誤を重ねた漁師町の食文化を体験できる。

さいごに

「さかなのば」では、新鮮な魚のお造りだけでなく、船方料理や、郷土料理など、地元の人でなければ知らない、地元の人でも知らない魚の食べ方と出会う。「さかなのば」は老若男女が集い、新鮮な地魚が味わえるだけの場所ではなく、いわきの漁師町に伝わる魚食文化を様々な人に伝える役割を果たしている。

 

イベント詳細

イベント名筑波大学社会学類・いわきでの調査実習
日程2018年7月22日
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