今年、海と日本プロジェクト in ふくしまでは、福島の海の復興の現状や風評被害について現地調査を行う、筑波大学社会学類・五十嵐泰正ゼミとコラボ。学生目線で、そのリサーチ結果や感想をレポートしてもらう連載企画をスタートします。初めて福島の海を訪れる学生たち。福島の海は、彼らの目にどのように映るのか。これからの「海づくり」の参考にすべく、長期的に連載していきます。
筑波大生現地調査レポ vol.23
こだわりがギュッと詰まった上野台豊商店のさんま
こんにちは!海と日本プロジェクトinふくしまに参加させていただいています、筑波大学社会学類3年の別府と申します。
9月24日の昼、いわき市の有限会社「上野台豊商店」の事務所を訪れ、店主の上野臺優さん(以下、優さん)にインタビューをさせていただきました。上野台豊商店では、生鮮さんまの出荷を主力に、さんまのポーポー焼、さんまの開きなどの加工品の製品づくりを行っています。今回のブログでは、上野台豊商店で販売している「生鮮さんま」と「加工品」についてお伝えします。
はじめに、生鮮さんまからみていきたいと思います。
生鮮食品では、「産地ブランド」が重要視されています。さんまの場合、1番ブランド力があるのは北海道、そして岩手、宮城が続きます。福島もかつては、岩手・宮城と並ぶレベルのブランド力がありました。しかし東日本大震災後、ほかの産地の魚があると福島県産のものは売れなくなってしまいました。福島県産のさんまは、流通の中で最下位の扱いとなってしまったのです。
それでも上野台豊商店では、美味しさへの徹底的なこだわりをもって勝負しようとしています。そのこだわりを調査すべく、実際に工場見学をさせていただきました。水揚げされたさんまは、ベルトコンベヤーにのせられ、コンピューターと人の手で1尾ずつ大きさを選別されていきます。小さいサイズのものは、養殖の餌用として使われます。
一定以上の大きさのさんまは、くるくると回るドラムに入れられ、一尾ずつグラム数を図ります。そして、サイズごとに魚槽タンクに仕分けられます。サイズによって、高級なお寿司屋さんに並ぶびお刺身として食べられる大型のもの、スーパーに並ぶ中型のもの、加工用の小型のものというように分かれます。
最後に箱詰め作業。目視検査をしながら、氷と5%の塩水が入った箱にさんまを入れていきます。人とテクノロジーをうまくつかうことで、素材の鮮度を落とさない、丁寧かつ短時間の作業ができているのだと感じました。
続いては、加工品をみていきたいと思います。
加工品では、「商品力」が勝負のカギとなります。産地は関係なく、ただおいしいものをつくれば、消費者は反応すると優さんは言います。東日本大震災後、上野台豊商店では、鮮魚に比べて差をつけやすい加工品に力を入れるようになりました。
上野台豊商店の商品、「さんまのポーポー焼き」にも美味しさの工夫が詰まっていました。
そもそも、「さんまのポーポー焼き」とは、新鮮なサンマのすり身に味噌、ネギ、生姜などをまぜてハンバーグ状にして焼いた、いわきが発祥の郷土料理です。この名前は、漁師が船の上で料理する際に、サンマの脂が炭火に落ちてポーポーと炎が立ったことに由来するという説もあります。
通常、「さんまのポーポー焼き」などの加工品は一度冷凍した原料を使って加工します。しかし、上野台豊商店では、水揚げからその日に処理して加工品にしているのです。鮮度感のある加工品にしたい、という優さんの思いが伝わってきます。
また、通常のポーポー焼きは、さんまを叩いて皮ごと入れているものが多いそうです。上野台豊商店では、「子供にも食べてもらいたい」という思いから、さんまを開いて皮も外しています。臭みにつながる内臓の血合いも入れていません。
皮や血合いを取ると、歩留まり(原料のうち、実際の製品に生かされた量の割合)が悪くなります。他社ならば、魚一匹に対して50%~60%くらいの歩留まりですが、上野台さんのところは40%ほどだそうです。それでも、臭みがなくておいしいポーポー焼きを作るためなら、ロスになるのは仕方がないといいます。
優さんは「震災後、さんまの水揚げが減ってしまいました。地元の食文化を繋いでいくためにも、お子様も一緒に食べていける商品を作ることが僕たちの使命です。」と力強く語っていました。
実際に私も、上野台豊商店のさんまのポーポー焼きを購入して、家で食べてみました。調理方法はいたって簡単。熱したフライパンに油をしいて、片面ずつ弱火で四分ほど焼くだけです。料理が苦手な私でも、おいしく焼けました!
生魚を買うのは、さばくのが面倒だとか、そもそもキッチンに魚焼き器ないな…と躊躇しまいますが、これなら手軽に魚を食べられますね。いざ実食!身がふっくらしていてとても美味しかったです。骨も少なく、こどももお年寄り、そして魚が苦手な人も食べやすそうだと思いました。
食欲の秋!優さんの思いと美味しさへの工夫がギュッと詰まった旬のさんまを、ぜひ食べてみてはいかがでしょうか。
イベント名 | 筑波大学社会学類・いわきでの調査実習 |
日程 | 2018年9月24日 |