今年、海と日本プロジェクト in ふくしまでは、福島の海の復興の現状や風評被害について現地調査を行う、筑波大学社会学類・五十嵐泰正ゼミとコラボ。学生目線で、そのリサーチ結果や感想をレポートしてもらう連載企画をスタートします。初めて福島の海を訪れる学生たち。福島の海は、彼らの目にどのように映るのか。これからの「海づくり」の参考にすべく、長期的に連載していきます。
筑波大生現地調査レポ vol.31
活気ある朝のセリ~試験操業・沼の内漁港の入札
みなさん、こんにちは!「海と日本プロジェクトinふくしま」に参加している筑波大学社会学類3年の秋田耕平です。福島県の沿岸漁業は現在、試験操業という形で行われていますが、水揚げされた魚はほかの都道府県と同様に一般入札(セリ)で取引されています。今回私は、11月14日(水)に沼の内漁港で行われたセリの模様を取材しました。
朝8時半、沼の内漁港の市場(沼の内市場)につくと、すでにかごに載せられた魚が多く並べられていました。この時間に並べられている魚は、刺し網漁と釣り漁、引き釣り漁などで獲られたもので、日ごろ関東地方で暮らす私にとってはなじみのない魚も数多く並べられていました。
とにかく目についたのはサケ。腹に卵(スジコ)をたっぷり蓄えたサケが所狭しと並べられています。時期は終盤に差し掛かっているそうですが、取材した週は大漁。市場にいた漁師によると、月曜日(12日)は取材した日以上にサケが並べられていたそうです。
このほか、ヒラメやマコガレイ、スズキ、ホウボウ、ワタリガニ、タコなどの地物として有名な魚も多く並べられていました。注目すべきはメジマグロ。「本マグロ」と呼ばれるクロマグロの子どもですが、この日は10本ほど水揚げされていました。クロマグロは国際的に漁獲量が規制されている魚種。そのため、自主規制としてセリに出されるのは毎週水曜日に限定されているとのことでした。また、カツオもわずかながら水揚げされていました。
水揚げされた魚は獲った漁船ごとにまとめられて、並べられていきます。そして、搬入が一段落すると、「カラン、カラン」という鐘の音を合図にセリが始まります。
セリというと、築地市場(今は豊洲市場)のマグロのセリのように、仲買人が声を張り上げて値段を釣り上げていく競売形式を想像します。しかし、沼の内市場でのセリは、一定時間に仲買人が並べられた魚を見極め、手持ちの緑色の札に1キロ当たりの値段をつけ、裏返しにして魚の入ったかごに置いていきます。その札の中で最も高い値をつけた仲買人が落札する形式です。人気の魚にはたくさんの札がつけられています。そして、「開票」との掛け声で札が裏返され、最高値で入札した仲買人に落札されていきます。
最初のセリがひと段落したのもつかの間、9時半ごろに底曳き漁で獲られた魚が市場へと入荷されていきます。漁船から直接水揚げ、という形を想像していましたが、実際はトラックで搬入されてきました。市場にいた仲買人によると、東日本大震災以前は各漁港ごとにこのようなセリが行われていたため、漁船から直接水揚げをしていたそうですが、現在はセリを沼の内と小名浜魚市場の2カ所に集約しているため、このようなトラックでの輸送が多いそうです。
並べられた魚には先の刺し網漁で獲れていたものに加え、ヤナギムシガレイやアジ、アカムツ(ノドグロ)、カナガシラ、アナゴ、アンコウなどがありました。特にヤナギムシガレイは大漁。いくつものかご満杯に積まれています。どの魚も、大きさごとに仕分けされ、セリにかけられます。そして、10時ごろにすべてのセリが終了しました。
仲買人によると、震災前は午後1時までセリが行われており、水揚げ量も現在の3倍近くあったといいます。ですが、試験操業とはいえ、私の目には活気ある朝のセリ風景に映りました。
徐々に復活しつつある福島県の漁業。その一端を垣間見ることができました。
イベント名 | 筑波大学社会学類・いわきでの調査実習 |
日程 | 2018年11月14日 |