筑波大生現地調査レポ45 消費者ニーズにこたえる魚食の提案を

2019-2-6
海と日本PROJECT in ふくしま

 

今年度、海と日本プロジェクト in ふくしまでは、福島の海の復興の現状や風評被害について現地調査を行う、筑波大学社会学類・五十嵐泰正ゼミとコラボ。学生目線で、そのリサーチ結果や感想をレポートしてもらう連載企画をスタートします。初めて福島の海を訪れる学生たち。福島の海は、彼らの目にどのように映るのか。これからの「海づくり」の参考にすべく、長期的に連載していきます。

 

筑波大生現地調査レポ vol.45

消費者ニーズにこたえる魚食の提案を

 

みなさん、こんにちは!筑波大学社会・国際学群社会学類3年の平野です。私は先月、福島県郡山市に本社を置き、福島県を中心に中心に宮城県、山形県、栃木県、茨城県の5県に広く店舗を展開している、株式会社ヨークベニマルの福島地区、関東エリアのそれぞれで鮮魚に携わっている方々にお話を伺いました。

まず、昨年12月5日に、福島地区鮮魚部MD(マーチャンダイザー)の林さん、いわき地区鮮魚部SV(スーパーバイザー)の高橋さんにお話を伺いました。

県外での福島県産水産物に対する評価は回復し、遠方からの注文も増えているそうです。ただ先述のとおり水揚げ量が少ない中、まずは地元から流通してもらうことを第一に心掛けています。林さんは「仲買人と荷主から価値が認められれば流通が増える流れで、そうなったらより多くの魚を取ってもらうしかない。試験操業を来年から週にあともう1回増やしてもいいのではないだろうか」とおっしゃっていました。

そして水揚げが増え、県外に売り込むことになった際の戦略を伺ったところ、「アピール方法としてのタレント起用や安心安全の訴え」や「県外の買い付け人へ勧める」という話が以前あったことを挙げていました。そして、「福島県産フェア」の県外での開催の希望もあり、「そこから需要が拾えれば県外へ引っ張ることも可能、そうした形で盛り上がればよいのではないか」とおっしゃっていました。

(そのほか、この日の内容については「地元スーパーとしての地産地消への思い」も合わせて参照していただけますと幸いです。)

 

どう安全性を伝えるかが当社の使命

  1. 茨城と違い、福島県水揚げの生魚の取り扱いが豊富でした
  2. 福島で加工された、さばの竜田揚げもありました
  3. ヨークベニマルでは毎週水曜に「お魚の市」が開催されています

 

では実際に茨城の店舗を見ている方はどう思っているのでしょうか。昨年の12月12日、関東エリア鮮魚部MDの熊谷正さんにお話を伺いました。

福島の原発事故の後、お客さまから「放射能は大丈夫か」という声は多く聞かれたそうです。安全性を説明しても買ってくれず、「うちでも気にしているしその気持ちはわかる」と理解を示しつつ「見えない放射能に、幽霊を怖がっているような印象を受けた」と熊谷さん。現在はそこまで気にしている人はいないと感じつつ、若い世代の動向や、当時のイメージの固定化を気にしているようでした。

また、福島県内と茨城における風評の見られ方は違うだろうとのこと。ヨークベニマルでは11月10日・11日に『福島県産フェア』を福島県内の全店舗で行いましたが、熊谷さんは「茨城では時期尚早かもしれない」と。

その理由について、熊谷さんは次のようにおっしゃっていました。

「情報化社会の中、お客様の方が知っている事も多い。ただ、自分の欲しい情報だけを切り取って判断している事も多々ある。福島の魚=放射能で危ないと感じるお客様に どう安全性を伝えるかが当社の使命と感じます。最大の課題は魚離れです。お客様アンケート調査を関東圏を中心に実施しましたが、時間が無い・捌けない・調理方法がわからない・高いなどネガティブな回答が多く、この不満から、少しでも利便性が高く、値頃感のある商品開発を現在進めています。」

 

少しでも魚離れを食い止めるために

  1. ヨークベニマルつくば竹園店
  2. 福島・茨城の魚に対する思いを話す熊谷さん
  3. 「いばらきの地魚取扱店」の認証のぼりが立っていました

 

熊谷さんには茨城県の水産物における風評被害や魚食への取り組みについてもお伺いしました。

震災・原発事故の起きた2011年度には福島・宮城産とともに茨城産の水産物も取り扱い数が落ちたとのことです。市場においても「この時期豊漁だった名産のヤリイカに関しても、売りに出しても売れない」状況でした。2012年度からは茨城産の取り扱い状況は回復傾向に転じます。現在は元通りまでにはいかずとも、「茨城だから買わない」といった状況にはなっていないそうです。

驚いたのは、茨城県のいわゆる県南と県北で反応が違うということです。茨城県南地域は客層が首都圏寄りということもあり、昔から様々な産地の魚に触れる機会が多かったと思われ、県北のお客様に比べ 茨城県産への拘りは強くないと感じられるとのこと。茨城県内のヨークベニマルの多くの店舗では、県の漁政課から「いばらきの地魚取扱店」の認証を受け、県から試食販売員の派遣を受けていますが、水戸とつくば・守谷で試食販売員を入れたときは同じ条件で販売した場合でも日立・水戸・石岡地区に比べると低い印象です。

熊谷さんは「県南はもともと銚子や江戸前から流通していた部分もあるので、そこまで茨城県産を喜んで食べていたかというとそうでもないのかもしれないし、茨城へのこだわりはないのかな」とおっしゃっていました。

また、茨城のヨークベニマルでは様々な取り組みをしています。茨城県民の日(11月13日)には茨城県産フェアを行い、効果を挙げています。この中で、県内に加工食品工場が多いということで加工品も一緒に販売したところ、好評だったそうです。たとえば、2トン用意したメヒカリの唐揚げが3ヶ月でなくなったとか。「食べやすさ、手の出しやすさだと思う」とおっしゃる熊谷さん。時間の無い方や調理方法・食べ方がわからない人にも手をだしてもらえる商品、茨城県内の漁師・市場・加工工場・消費者みんなが喜ぶ商品を作りながら少しでも魚離れを食い止められれば、と加工品の重要性を訴えていました。

 

イベント名筑波大学社会学類・いわきでの調査実習
日程2018年12月12日
  • 「筑波大生現地調査レポ45 消費者ニーズにこたえる魚食の提案を」
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