レポート
2024.09.30

おそめの海町さんぽ〜海が見えるレトロ駅編〜

 

みなさん、こんにちは! 海と日本プロジェクト in ふくしま、レポーターの染矢です。

食欲の秋、読書の秋、芸術の秋…いろいろな秋がありますが、私にとっての秋といえば、「海町さんぽ」。気温もちょうどよく、心地よい秋風と秋の虫が美しいBGMを奏でてくれる、まさに今がお散歩のベストシーズンなのです。

今回選んだ海町は、いわき市の最北端にある末続地区。海が見える駅として有名な末続駅があり、映画のロケ地やアニメの舞台にもなっています。注目を浴びる駅だけでなく、海町もしっかりとおさんぽしてきました!

 

地元の人たちの愛情が詰まったレトロ駅

  1. ひとつの物語が生まれそうなレトロな待合室
  2. 駅ノートには訪れた人の思いが綴られていた
  3. 海の姿は遠いが、波音はダイレクトに伝わってくる

末続を目指して、いわき市内の南北走る国道6号線、通称ロッコクを北上。海が見える駅舎にワクワクしながら車を走らせていると、先ほどまで見えていた海の姿はいつの間にか消え去り、目の前には草木の緑と果てしなくまっすぐ続くロッコクしか見えません。

道を間違えたのかと思っていたら、小さく「末続駅」と書かれた看板を発見。案内通りに右折すると、そこにひっそりと佇む小さな駅がありました。

赤い瓦屋根が特徴的な木造駅舎。人気がないせいか、ここだけ時が止まっているかのような雰囲気が漂います。古い駅舎が次々に新しくリニューアルされているなか、これだけかつての姿を残す駅は貴重です。

駅舎内をのぞくと、かつて使われていたきっぷ売り場と、ベンチが並んでいました。壁には、末続駅の成り立ちや駅にまつわる新聞記事、地元で行われた祭りや駅構内の花などの写真が飾られています。誰もいないはずなのに、なぜか人の温もりを感じます。

その理由は、末続駅の成り立ちにありました。末続は当時から民家は少なかったものの、子どもたちの通学に必要な交通手段かつ戦後復興のため、駅開設を求める地元民の声が上がり、昭和22(1947)年6月に開業。区長が先頭に立ち、地元の人たちで駅建設を行いました。

その後、収益が見込めないことから駅廃止の話が上がるも、地元の人たちの反対運動が起こり、なんとか廃止を免れたのです。

地元の人たちの手によって生まれ、いくつもの苦難を乗り越え、今日まで大切に守られてきた末続駅。駅舎に飾られた掲示物やホームには色とりどりの花を咲かせる花壇が並び、地元の人たちの愛情がそこかしこに見受けられます。

駅舎からホームへ出てみると、遠くの方から「ザブーン」と波音が聞こえてきました。ホームの端に立ってみると、目の前に大海原が広がっています。電車を待ちながら暇つぶしに海が見渡せるとは、なんと贅沢な駅でしょうか! 

地元の人たちが守り抜いてくれたおかげで、この景色を楽しめるんだと思うと、余計に感動が倍増します。

町を歩いたからこそ気づく、末続らしさ

  1. 海の姿が見えなくなるほど高く設置された防波堤
  2. 海辺は大量のテトラポットで埋め尽くされていた
  3. テイクアウト専門だが、イートインスペースもある

せっかくなので、末続駅から見えた海まで歩いてみることにしました。ポツポツと民家が立ち、所々に空き家が目立ちます。人の姿はなく、過疎化が進んでいることは明らかです。

海沿いには、私の身長をはるかに超える巨大な防波堤がそびえ立ち、震災の影響を感じずにはいられません。強靭な壁を超えた先に、果てしなく続く海が広がっていました。いろんな感情が入り混じり、テトラポットに激しく打ち付ける波音が心の奥にじんじんと響き渡ります。

海を後にし、住宅街へ。町のあちこちで波音や鳥のさえずりが聞こえ、歩いているうちにリラックス気分に。最初は人気のなさに寂しさを感じていたのですが、人や車の姿がほとんど見えないからこその心地よさに気づきました。

末続の心地よさを楽しみながら住宅街を歩いていると、かわいらしいカフェを発見! 「すえつぎカフェ」という地元で唯一の飲食店なんだとか。末続ににぎわいを取り戻すお手伝いをしたいという思いでオープンされたそうです。今回は残念ながら休業日だったので、次回名物の自家焙煎珈琲とスパイスカレーを味わいに訪れたいと思います!

今回の海町さんぽは、過疎化が進むなか少しでも町を盛り上げようとする人の姿を垣間見ることができ、小さな末続という町は、大きな地元の人たちの愛で支えられているなと感じました。それは、自分の足でゆっくりと町を歩いたからこそ気付けたこと。これからも、海町さんぽを通して、福島の海町にスポットライトを当てていきたいと思います!

イベント詳細

イベント名おそめの海町さんぽ〜海が見えるレトロ駅編〜

レポーター紹介

染矢 優香(そめや・ゆか)

埼玉県所沢市出身。2021年にいわき市へ移住。旅行ガイドブックの編集・ライターを経て、現在いわき市でフリーランスとして活動中。

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