みなさん、こんにちは。海と日本プロジェクト in ふくしまレポーターの松井武郎です。
この6月に「海無し市」の福島市からいわき市へと移住してきました。いわきのこと、海のことをほとんど知らない私がまず手をつけたのが、いわきの海を知ること。新しくできたサイクリングロード「七浜海道」の周辺をドライブしたり歩いたりして見た風景や学んだことをレポートしています。いわき市の中之作港から始まった連載は2回目。今回は小名浜港についてご紹介します。
小名浜港で有名なのは、お土産ショップ「いわき・ら・ら・ミュウ」ですよね。ということで「ららミュウ」を目指して散歩していますと、建物のある堤防の先にパネルを見つけました。パネルをみると、小名浜港に2隻の駆逐艦が沈められていることが書かれています。名は「汐風」と「澤風」。なんと、私が立っているこの堤防は、駆逐艦を沈めて沈めて造られたということです。
戦後の小名浜港では、食糧増産に向け、漁獲高を上げるべく早急な整備が求められました。当時の港の整備は、不完全だった防波堤や防砂堤を完成させることが喫緊の課題でした。そこで資材節減と工期短縮の応急的な措置で、艦船を船に沈める手法での整備が行われました。昭和23年4月に駆逐艦「澤風」が旧小名浜魚市場前に、同年8月には、駆逐艦「汐風」が現在の1号埠頭に沈められました。その後、2隻は長い間防波堤として小名浜を守ってきたそうです。
現在は、「汐風」も「澤風」も、その姿を見ることができませんが、それぞれが沈められたあたりに行ってみました。
まず「澤風」があった場所。ここには小名浜魚市場があったそうですが、震災で大きな被害を受け、現在は別の場所に新市場ができたため、いまは単に堤防があるだけです。どのあたりに沈められていたのか正確には分かりませんでしたが、釣りをしている人をたくさん見かけました。
何組かお話を聞かせていただいたのですが、初心者だという方がおおくいらっしゃいました。駆逐艦が沈められた場所が釣りスポットになり、小名浜の日常の風景になっているわけです。なんだか感慨深いですね。
次に「汐風」が眠っている小名浜1号埠頭に戻ります。1号埠頭は、まさにこの「いわき・ら・ら・ミュウ」が立っている場所です。ららミュウの中に入ってみると、館内のディスプレイに、観光PRアニメーション「人力戦艦!?汐風・澤風」が放映されていました! なんと、汐風、澤風を擬人化したアニメが制作されていたんですね。現在3話まで制作されているようで、続編の公開が楽しみです!
ほかにも何かないかなと思って調べてみると、小名浜港のそばの三崎公園に、「澤風」から撤去されたタービン機関があるということで行ってみました。澤風も汐風もその姿を見ることができない今、唯一確認することのできるのが、このタービンです。このタービンはおよそ100年前につくられたもの。こびりついた錆が長年にわたってこの町を見守ってきたということを物語っています。
ちなみに、こうして軍艦や駆逐艦を沈めてつくった防波堤は各地にあるようです。私はこれまでこのようにしてつくられた防波堤があることを知りませんでした。地域の歴史を紐解いてみると、今まで知らなかったことを新たに知ることができて面白いですね。私の地元である福島市にも、何か戦争と関係する遺構があるかもしれません。皆さんの地元にもきっと何かあるはず。
港をふらりと散歩するだけで、歴史や文化に触れられる何かを発見できるはず。ぜひ歩いたり、ドライブしたりしてみてください。それではまた次回!
海プロ in ふくしま レポーター:松井武郎
イベント名 | 沈船防波堤 |