今年、海と日本プロジェクト in ふくしまでは、福島の海の復興の現状や風評被害について現地調査を行う、筑波大学社会学類・五十嵐泰正ゼミとコラボ。学生目線で、そのリサーチ結果や感想をレポートしてもらう連載企画をスタートします。初めて福島の海を訪れる学生たち。福島の海は、彼らの目にどのように映るのか。これからの「海づくり」の参考にすべく、長期的に連載していきます。
筑波大生現地調査レポ vol.29
作り手と客の架け橋を目指して
みなさん、こんにちは。海と日本プロジェクトinふくしまに参加させていただいている筑波大学社会学類3年の竹川です。今回僕は、いわき駅の目の前にお店を構えるイタリア料理店のスタンツァを経営されている北林さんに取材をさせていただきました。
北林さんは震災以前からスタンツァを開いており、震災前後の人の移動や飲食店の減少などを間近で見ることになったといいます。人がいない駅前を見て、悲しい、悔しいと感じたことから、ただ飲食店としてやっていくだけでなく全国に発信していくことができるものを作りたい!という決意に至ったそうです。
原発事故を経て食材の安全面について考えさせられることが多くなった時に、そもそも、どこで、誰がその野菜を作ったのかが不明瞭であったことに北林さんは気づき、地元農家の方々との出会いにつながりました。地元の農家の方々との人脈が広がっていく内に、北林さん自身が現地に足を運んで調達した食材が一番安心安全であると感じたそうです。また、自分のお店からそう遠くないところで、新鮮無農薬でおいしい野菜が作られていることなどを発信していきたい!と思ったことから、店内にその日使われている食材の産地・生産者を書き記したボードを展示してあります。
これらの経緯を経て、地元の生産者・食材を大事に考えるようになったと言います。原発事故を機に元々常連だったお客さんが疎遠になってしまうこともありましたが、北林さんの取り組みで新しく常連さんになる人々も多いようです。危機感から、福島の良さを伝えるいいチャンスに変えているといっても過言ではないでしょう!
ただ北林さんは、顔の見える野菜や試験操業の魚を毎日安定して仕入れることができないのは仕方なく、安定した売り上げよりも、その日に採れたものの中から作りたい料理を自由に作っているというのが本音のようです。
スタンツァさんの料理といえば、ポーポーロールキャベツや、コンフィと呼ばれるオイルに浸してじっくり煮る技法を用いるさんまのコンフィ、さんまのポーポーピザなど地元の食材を活かしている上に、個性的なものが目を引きます。これらのメニュー考案の際には、食材を見て生産者の方々の顔を思い浮かべると、自然とメニューがひらめくそうです。北林さんの生産者との結びつきの強さを感じずにはいられませんでした。
現在の福島に関して北林さんは、復興という表現で元のいわきに戻すというよりは、震災以前よりも、自分達が住みたいと思う街、新しい地域作りに貢献していきたいと語ってくれました。また、今後福島の料理人や生産者に関わる方々で結成された、F’s Kitchenなどが企画するイベントを通じて、商店街の文化や純粋な「おいしい!」を発信していくことで、県外などから様々な人々が来てくれることを期待しているそうです!皆さんも是非スタンツァさんに立ち寄ってみてはいかがですか?
イベント名 | 筑波大学社会学類・いわきでの調査実習 |
日程 | 2018年9月23日 |