みなさんこんにちは。海と日本プロジェクト in ふくしまレポーターの松井です。
以前こちらの記事で(https://fukushima.uminohi.jp/report/umigomiart/)、いわき市・豊間で開催された海ゴミを使ったアート作りのワークショップの様子をご紹介しました。
このワークショップは福島県の動物殺処分ゼロを目指し活動している小学生『動物助け隊』の皆さんと、海岸に落ちているマイクロプラスチックを使ってアクセサリー制作をしている『Better Days』の2チームによって開催されました。『Better Days』の活動については、6月に放送した番組でもその取り組みを取り上げました。
このワークショップでは、海ごみを使ってアクセサリーやポスターの作成が行われました。近頃、海ごみ関連のニュースを見ていると、こうした「海ごみ」と「アート」の組み合わせをよく見かけます。そこで海ごみとアートをかけ合わせた活動にはどんなものがあるのか、調べてみました。
(出典:https://www.aquamarine.or.jp/news/2021kidsart07/)
福島県・いわき市のアクアマリンふくしまでは、県内の小学校、幼稚園、保育園の児童を対象に、9月28日まで「プラごみアート」作品を募集しています。プラごみを材料に作品を作るとなると、自然に自分の周りにはどんなプラごみが、どれだけあるかというのを意識すると思います。まずはそうしたことを意識しつつ作品作りを楽しむことで、子どもたちが海ごみ問題に触れる良いきっかけになるのではないでしょうか。調べてみると、アクアマリン以外でも、水族館や商業施設などで海ごみアートの取り組みは数多くあるようで、海ごみを使ったアートは大きな広がりを見せているようです。その中でも、私が特に興味を持った事例を紹介します。
(出典:https://co.sunshinecity.co.jp/press-room/news-release/2021-9-9-2.html?year=2021)
東京・池袋のサンシャイン水族館でも、海洋のプラスチックをテーマにした展示を行っています。この展示はアーティストの藤元明さんが、国内の海岸で集めたプラごみを使って作られたアート作品が展示されています。
藤元さんは、以前から社会現象や環境問題をモチーフとしたアートを制作しているそうで、2019年には東京・江東区のGallery A4で「陸の海ごみ」という企画展を、今年の5月にも渋谷のelephant STUDIOで、「海ごみのあと」という個展を開催しています。You Tubeには「陸の海ごみ」展のダイジェスト動画(https://youtu.be/CxLriioHJz0)がアップされていて、作品の一部を観ることができます。
動画では、2019年10月に行われたトークショーの様子が収められています。その中では、海ごみ問題は、複雑に絡み合っていて、1つを悪者にしてかたずけられるものではなく、「悪者のいない問題である」ということが語られています。
動画の中では、海ごみについての本質的な議論が繰り広げられており、本当にプラスチックに依存しない生活を実現することを考えると、個人個人の取り組みだけでなく、その問題を生み出している体制を見直していかなければいけないという問題の根本から目を背けていている自分を意識させられました。私は、正直に言うとこうしたスケールの大きい話になると、個人レベルでの取り組みははたして問題の解決につながっているのだろうかと無力感を感じてしまい、問題から目を逸らしたくなってしまいます。まずはその絶望にしっかりと向き合ったうえでないと、その先を考えることはできないのではないかと。
そして個人レベルの取り組みに関しても、例えばごみ拾いを通じて、自分の住む町の海の環境を知り、普段の消費行動が変わるなど、実際に海がきれいになるということ以外にも、海ごみ問題と向き合いその先にどのような社会にしていけばいいかということを考えるためのきっかけとしての効果があるのではないかと思います。どのような社会にしていけばいいか考えるといっても、それを考えるのは非常に困難で、絶望や無力感を感じてしまうかもしれません。そうした時にアートは鑑賞者に現実を突きつけて感情を揺さぶったうえで、これからの社会を思い描いていくための補助線を引いてくれるのではないかと思います。
海プロ in ふくしま レポーター:松井武郎
イベント名 | 広がりを見せる海ごみを使ったアート |